第2話 アレクと4人の仲間たち

アレクの部屋から10分ほど歩いたところに「金の豚の丸焼き亭」という酒場がある。丸坊主で豪快な性格の親父が店主で、安くかつ量が多い酒場として若者や冒険者に人気の店だ。


アレクが店に入ると奥に自分の方へ手を振っている男がいた。どうやら自分が最後らしいとアレクは今日集まるメンバーがいかにこの飲み会を心待ちにしているかを感じ、つい苦笑した。


「遅いぞーアレク!2分も遅刻したんだから今日の支払いはお前持ちな!」


そう言ってカラカラと笑う大男の名前はギル。普段は鍛冶屋で見習いとして働いており190cmほどの高身長と鍛え上げられた筋肉を持つがっしりとした気のいい男だ。


「そうよう、アレクが来ないから15分も何も頼めなかったじゃない」


「嘘つけミリア!おまえの前にある大量の空グラスはその状態で運ばれてきたってのか!?」


はは―、バレちったかと拳骨を頭に乗せて反省のポーズをとるオレンジ色の短髪少女はミリア。料理人志望で現在は街一番のレストラン「風見鶏」で下働きをしている。


「正確には2分13秒の遅刻だよ、アレク」


「おまえはおまえで相変わらず細かいよな、ロイ…」


丸眼鏡に黒髪の真面目そうな青年の名はロイ。

細見だが眼鏡の奥の切れ長の目が彼を弱そうには見せない。


几帳面で面倒見が良い性格で、現在は街の学校で数学教師として働いている。


「アレクもこのやり取りが好きで遅れてきてる」


「ちょっと困ってる人がいて手伝ってたら遅れただけなんだが、ルミエラに言われると見透かされてる気がしてちょっと嫌だな…」


銀色の長髪を持った無表情の美人はルミエラ。

街の外れにある教会でシスターとして働いている。


整った顔立ちに出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる抜群のスタイルで、街を歩けば10人中10人が振り返ることから仲間内では度々「二度見姫」とからかわれていた。


だがそれは外見の話で、無表情で何を考えているか分からないため、彼女と親しく話せるのはこの四人くらいだった。


「まあとりあえず乾杯しようぜ。店員さんすいませーん、俺にもビール1つ!」


はいよーという女店員の声が聞こえ、まもなくアレクの前にもビールが置かれた。


「じゃあ今月も皆さんお疲れ様でしたってことで、かんぱーい!!」


かんぱーい!と全員が口に出し、ガツンとグラスをぶつけ合った。

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