第46話 レイラとアレク②

「えーと、なんで貴族のお嬢様が冒険者になるんだ?しかもあんた長子なんだろ?後を継ぐんじゃないのか?」


この国は男女差別はあまりなく、女性が家長となることも可能だ。レイラが長子であるなら後継か、もしくは政略結婚で同格の家に嫁ぐのが一般的だ。


「実は恥ずかしながら、我が家は貴族位を剥奪されましたの」


レイラは俯き、悲しそうに呟く。アレクは知っていたのであまり驚きはなかったが、一応演技はしておくことにした。


「そうだったのですか…でもだからといって冒険者になるというのは、元貴族のお嬢様では難しいのではないですか?」


クレストア家は既に質量魔法を失っている。そんな状態で急に戦うというのは箱入りお嬢様には酷ではないだろうかと思い、アレクはそう言ったのだが、


「わたくしは特殊な魔法が使えます。我が家に代々伝わる秘術が」


「!?クレストア家には今質量魔法の使い手はいないはずでは?」


「質量魔法をご存知でしたか。仰る通り、公にはそうなっています。しかしどういう訳かわたくしだけは生まれつき使えたのです」


もっとも、かつての先祖たちと比べればウンと能力は低いですが…とレイラは自嘲気味に続けたが、アレクは頭の中で算段をつけ始めた。


「…わかりました。あなたがどこまで戦えるかは別として何やら複雑な理由がありそうだ。その辺りの事情を説明してもらうなら俺の仲間たちも一緒の方がいい。今夜仲間で集まるからそこに来るといい」


「!!ありがとうございます!ぜひ、行かせて頂きます!」


場所と時間を伝えてから2人は別れた。

あの場で話を聞いても良かったが、細い裏路地で誰が聞いているかもわからない場所で聞いていい話かわからなかったので場所を変えることにした。


それに仲間たちに秘密裏に事を進めるのは今のパーティかつ株式会社においては得策ではない。全員が出資者で、リーダーと言っても過言ではないし、なにより自分だけで決めるよりも良い結論に辿り着けそうだ。


レイラがとんでもない厄介事に巻き込まれているとして、質量魔法という特殊な技量の使い手が仲間になるチャンスをみすみす逃すのは勿体ないということも、アレクの判断を先延ばしにさせたのだった。

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