第20話 引き上げどき
「ウインドカッター!」
ロイの持つ杖から風の刃が射出され、眼前に迫っていたゴブリンの頭部を切り裂いて絶命させた。
その光景にまだ慣れていないためか少し身震いして周りを見回すと、丁度ギルが最後のゴブリンにとどめを刺すところだった。
「これで終わりだ!」
声とともに剣を振り下ろす。肩口から袈裟懸けに切り裂かれたゴブリンは血を撒き散らして絶命した。
「なんとか目標の10匹倒し切ったぜ…」
ギルが披露困憊といった表情で口に出す。現在第3階層まで到達しているが、ワームと呼ばれる大きな芋虫のような魔獣ばかりと出会い、ゴブリンがなかなか出現しなかったため既に2日目の夜となっている。
目標の5階層はまだ先ではあるが受けていたクエストについてはこれでクリアとなった。
魔物を倒すと魔物の核となっている魔石と、その魔物の一部がドロップアイテムとして残るのだが、それなりの量を回収してここまで進んできている。
しかし、食料やスタミナポーション、毒消しの丸薬などここに来るまでにそれなりのアイテムを使っているため、クエストのクリア報酬と魔石やドロップアイテムの売却利益を考慮しても今の時点ではおそらく赤字だろう。
「もう魔力が残ってない…休まないと魔法は打ち止めだ」
とロイ。
パーティの基本戦術として、魔物との距離が離れていればロイの魔法かミリアの弓で先制攻撃、距離が近ければ戦士のギルが盾で相手の防ぎつつ短剣や弓でミリアが崩してギルが片手剣でとどめを刺す。もしくはギルが攻撃を弾いて距離が出来たところをロイの魔法で狙い撃つ、という形で上手く回っていた。
何度か攻撃を受けることもあったが、その都度ルミエラの回復魔法で傷を癒している。
「もう、流石に、限界よ」
一度セーフティエリアと呼ばれる魔物の出現しない区画で休憩と仮眠を取ったが、それ以外はほとんど歩き通しだ。体力のあるミリアがそう言うのだから、流石に限界か。そう判断したアレクは、
「分かった。今回の冒険はこれで…」
切り上げよう、と言おうとした瞬間、奥の通路からコボルトと呼ばれる狼男のような犬の頭をした人型の魔獣が3匹現れた。
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