第16話 ダンジョン突入!

アレクたちは昼前には荒野の洞窟に辿り着き、すぐに第1階層へと向かった。


荒野の洞窟の第1階層は鉱山のような剥き出しの土と木枠に支えられた文字通り土の洞窟といった内装になっていた。壁に埋め込まれた蛍光石と呼ばれる光る石が暗闇を照らしており、松明等の明かりは必要ない。


戦士のギルを先頭にミリア、ロイ、ルミエラ、アレクといった順番で隊列を組み、進んでいく。


狭い洞窟では唐突に魔物と出会うことがあるため、奇襲対策のアレクを殿に置いたこの布陣となった。モンスターと接敵した場合先ずは戦士のギルが盾で敵の攻撃を凌いで時間を稼ぐ。その間に仲間が攻撃するという手筈になっていたが、


「あ、言い忘れてたけど、今回は隊列後方からの奇襲以外俺は基本手を出すつもりはないからな」

と驚くべきことをアレクが言って思わず全員が振り返った。アレクはそれを見て、

「おいおい、ダンジョンなんだからちゃんと周囲に気を配れよ…」

と嘆息した。


「手を出さないってどういうことよ!?剣士のアレクがメインアタッカーじゃないの!?」

「俺は実は今回が初の冒険じゃないんだよ。冒険者免許を取った後の2週間で他の冒険者とダンジョンに潜ってたんだ。だから今回はみんなが経験を積むために俺は手出ししない方がいいと思ってな」


言い出しっぺの自分がリーダーを務めるのはパーティの人間関係からいってもベストだと思うが、リーダーである以上仲間を引っ張れるだけの力が必要だ。


そう考えたアレクは仲間が訓練校に通う間、他の冒険者と野良パーティを組んでダンジョンに潜っていた。その中で何が必要か情報を集め、今回の冒険の準備をしてきたのだった。


「え!?剣士の訓練校に通ってたんじゃなかったの?」

「俺は1年間近所の剣術道場に通っていたから、訓練校は行かずに実戦に参加した方がいいと思ったんだよ」


アレクは冒険者を副業として始めることを計画し始めた1年前から実は準備を始めていた。自分の能力にある程度の自信がついた段階で仲間を募ったのだった。


「と、そんなこと話してる間に来たぞ、ゴブリンだ」


全員が慌てて前を向く、薄い灯りが灯る洞窟の奥から2匹のゴブリンが現れた。

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