第58話 レイラの感想
レイラがアレク達の仲間に入れてほしいと言ったのはあくまでも評判を聞き、他に選択肢がなかったからだと思っている。
レイラの優秀さはここまでの探索でわかったが、逆にレイラに失望されてはいないか、アレクはそれが気になっていた。
レイラは「うーん」と少し考えるそぶりを見せ、
「正直に言えば想像していた以上に皆様優秀でしたわね」
と答えた。
「わたくしはこれでも幼少期から専属教師に武術的な体の使い方を教わっていましたし、何度か教育の一環としてダンジョンにも潜っています」
貴族にはレイラのように幼少期から武芸を仕込まれる者が多い。
理由はいくつかあるが一番は護身のためである。帝王学を叩き込んでどれだけ優秀な人間に育て上げたとしても街で暴漢に殺されてしまっては意味がない。
そういう理由で位の高い人間ほどしっかり鍛えられている割合が多い。
ただしレイラの場合は家庭の事情という面も大きかったが。
「ですが、皆様はまだ冒険者になられて数ヶ月で、それまでは戦闘なんてしたことがなかったのでしょう?それでこの速度で探索を進めているというのは正直なところ驚異的ですわ」
アレクだけはサイトウの道場に通っていたが確かに他の4人は素人もいいところで、まだ始めたばかりだ。
アレクが今のところ頭一つ抜けて強いが、他の4人もアレクの探索速度に十分ついていけている。
「まあ、荒野の洞窟の低階層は固定型のダンジョンだからな。仕事終わりに次回のダンジョン攻略に向けた情報はメンバー全員にステカで送っているし、そういう情報共有のおかげでスムーズにいっているのかもな」
アレクは戦うであろう魔物や探索で利用する予定のアイテムなどの情報をあちこちから仕入れ、仲間たちへと事前に送っていた。また、次回探索時の道順についても地図情報を現在では全員に送っている。
これにより探索中に道に迷うことが減り、探索をより効率的にしていた。
こうした情報を集めるためにアレクはそれなりの金額と時間を費やしている。本業である商人としての仕事の合間に行うのだから、驚くべきバイタリティである。
ただ、地形が入るたびに変化するランダム型のダンジョンではこうはいかない。
低階層からランダムに地形が変化するダンジョンはウィンベルク近辺にも存在し、冒険すること自体に喜びを見出しがちな若手冒険者にはそちらのほうが人気だったりするのだが、アレクにはあまり魅力的とは思えない。
不確定要素が大きすぎるからだ。
「徹底した効率化でこの速さの探索を実現しているんですのね…パーティの皆様は優秀なリーダーの元で戦えて幸せですわね」
「どうだろう、かなりハードなスケジュール組んでるから恨まれてるかもしれない」
そう言って二人は笑った。ダンジョンの中でのつかの間の息抜きの時間となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます