池崎さん! もふもふしてもいいですか? 陽野ひまわり様 紹介文

 相変わらず親バカの話題からなのですが、


 休日に遅くまで寝ていたら、パピヨンのソラくんがやたらと気にしてきて目が覚めました。


 休日くらい寝かせておいておくもうほんと可愛いなあ!←即堕ち。


 でもいつも以上にベタベタしていて、行くとこどこにでも着いてくるのです。


 いくらなんでも甘え過ぎだなあ、おかしいなあと思ったら、たまに鼻から水音が聴こえました。


 ああ


 鼻が詰まっていて不安なのね……。


 どうやら花粉に弱かったり、鼻炎持ちっぽいうちのソラくん。


 もし野生に帰ったら、真っ先に淘汰されちゃうだろうなあ(遠い目)。


 まあパピヨンはもともと人に飼われていたワンコなので、野生では暮らして行けないでしょうね。


 そんなところもまた、愛し。










 そんなこんなで、ワンコの可愛さや性質を物語に組み込んだ、実は技巧派な物語。


『池崎さん! もふもふしてもいいですか?』をご紹介させて頂きます。


 もしこんなことを言われたら、即効で言ってしまうでしょうね。


「ええで」(ニッコリ)



















 池崎カヲルは夢を見る。高貴なボルゾイ血統の、とある王国の王子様。


 これは、あくまで夢なんだ。


 とある晴れた日のこと、心地よい日差しを浴びながら、森の中を散歩していたんだ。


 それは突然の出来事だった。懐に何かが飛び込んできた。


 顔を上げたその先には、カフェオレカラーのトイプードル。


「ココと申します! 私








 王子様をもふもふすることが夢だったのです‼︎」




 不思議な不思議なその夢は


 ちょっと強引なもふもふから始まりました。



















「ボルゾイはねえ、大型犬なんだけど、その昔ロシアの貴族たちに愛されたオオカミ狩りのための犬でね?

 被毛が長くて美しくて優雅で、物静かで気高い雰囲気の犬なんだよ

 そのボルゾイがめちゃくちゃ綺麗な子でさ

 あの白くて豊かな胸毛に顔をうずめて、もふもふしたくなるんだよねぇ……」


 熱く滑らかに語るのは、トリマーをしている瑚湖ここちゃんだ。


 定番のカフェテラスで、親友の優希ちゃんと、楽しくお話ししています。


 イヌバナに花を咲かせていましたが、今日のお話は、どうやらいつもと違う様子です。



「イヌバナなのかコイバナなのかわからない表現ってどうなのよ⁉︎」


 前カレと別れてから二年半。瑚湖ちゃんは恋をすることに臆病となってしまいました。


 好きになった相手には、真っ直ぐに愛を注ぐ。


 その姿は、まるでワンコのようで。


 でも、その愛情を重く感じることも、どうやらあるようでして。


「じゃ、次に私と会うときまでに、瑚湖は池崎馨さんと、お店以外の場所で会う約束を取り付けること!」


 そう言われると、瑚湖ちゃんも戸惑ってしまいます。


 ボルゾイの雰囲気そのままな、優雅で穏やか。


 そして、ちょっぴり近寄りがたい。大切なお客様の池崎さん。


 まだまだ臆病な心は覗いてくるけど、それでもささやかな夢があります。


 池崎さんを、もふもふしたいなあ。



















 池崎さんの愛犬、アリョーナは優雅で穏やかなボルゾイです。


 今日も彼のトリミング予約が入っていた。瑚湖ちゃんは気合を入れます。


 今日こそ池崎さんと!


 池崎さんがやってきました。低音ボイスにスラリとした佇まい。今日も相変わらずかっこいい。


 なかなか上手く誘えない中、池崎さんは不思議なことを言いました。


「そっか。に出てきたのは君だったのか」


 なんの話かはわからなかったけれど、勇気を出して、池崎さんをドッグカフェに誘いました。


 が、断られてしまいました。


 がっくりとしてしまいましたが、気分転換に瑚湖ちゃんは出かけることにしました。


 コミュニティセンターの前には、文化サークルの作品が複数点展示されていました。


 一際目を引いたのは、涼し気な水色のサマーニットでした。


 可愛いのにとても、綺麗。


 でも、思い出したのは苦い記憶。


 手編みのセーターなんて


 重い。





 それでもやっぱり気になって、瑚湖ちゃんは再びサマーニットの所にやってきました。


 どうしてもあれを着てみたい!


 湧いた希望に浮かされて、サマーニットを作っているサークルに電話をかけました。


 そして、実際にサークルに参加することになりました。


 参加者であるおばさま方に話しかけられ、愛想笑いを続けました。


 どうやら講師の先生はとても若く、おばさま方の人気者だそうだ。


 どんな人なんだろうと想像を浮かべると、講師の先生が現れました。


 瑚湖ちゃんはぎょっとしました。


 聞き覚えのあるイケメンボイス。


 そのいでたちはきっと、ボルゾイのように優雅で……。


「あ、君……








 どこかで会ったことあるような……」




 瑚湖ちゃんの恋の道のりは、まだまだ前途多難のようです……。
















 トラウマなんです。


 犬みたいだって言葉。


 池崎さんの右手が触れる。


 温かくて優しくて。


 満たされたことが、切なくて。








 少しずつ会話が増えていく。


 ちょっとだけでも、心は近づいている。


 ように感じる。


 けれども、池崎さんの瞳に映るのは


 きっと私なんかじゃなくて。









「ココちゃんの気持ちを受け止めてくれるひとがきっと現れるよ」










 大人の優しさは、何よりも非情なナイフのようで。












 瑚湖ちゃんの恋は、一筋縄ではいきません。


 積極的で情熱的な男性、征嗣くんは瑚湖ちゃんのことがお気に入りのようです。


 心は生もの。感情の泉は、水を汲まれれば溢れ出すもの。


 池崎さんは、デートをしようなんてストレートには誘ってくれません。


 少々強引な申し出でも、気持ちを無下になんてできないものです。


 だって、彼の方も本気なのですから。













 そんな中、池崎さんの幼馴染となのる女性が、瑚湖ちゃんのもとに現れます。


 笹倉亜依奈。それが彼女の名前です。


 瑚湖ちゃん、これは大ピンチ。思わぬところで、恋のライバルが出現です。


 でも、彼女が言い放った一言は、とても意外なものでした。














「お願いだから、私から馨を奪って」















 瑚湖ちゃんはとてもがんばります。


 アリョーナのため、池崎さんのため。


 ワンコ同士のトラブルも、苦難はあっても真摯に立ち向かいます。


 まだまだ遠く彼方にある、池崎大陸に上陸するため。


 でも、池崎さんの中には、やっぱりまだまだ彼女がいるのかな。
















「征嗣くんはいい人だと、僕も思うよ」



















 そんな言葉、あなたの口から聞きたくなかったのに。



















 僕は亜依奈を大切にしていた。順調にいっていると思い込んでいた。……でも、彼女は違ったんだ


 俺と一緒にオーストラリアに行かない?


 アリョーナ、こちらでお世話になるのは今日で最後になるから


 本当の気持ちに向き合っても……また背中を向けてしまったら意味ないじゃないですか……

















 池崎さんに教えてもらった、オフホワイトのメンズのセーター。


 このセーターも、自分の気持ちも、行き着く先にあてはない。











 好きな人とするはずの、愛の証。


 ほんのひと時の触れ合い。


 その相手は、


 彼ではなかった。













 これで本当に



 私の恋が終わる。















 カヲル王子は夢の中。アイナ姫と対峙していた。


 切なく求めた熱い気持ちは、今では妙に冷静で。


 カヲル王子は気づいてしまった。


 彼女に多くを救われていたことを。


 カヲル王子は気づいてしまった。


 大切な彼女を


 失ってしまったことを。

















 優雅で美しいボルゾイと


 社交的で可愛らしいトイプードル。


 時にはじゃれあいすれちがい。


 ハラハラドキドキ、そしてもふもふ。


 不器用に揺れる心の幅も、とても優しい心があるから。


 ワンコにまみれた恋模様。


 なんだかとってもワンだふる。















 池崎さん! もふもふしてもいいですか?


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054882366814





 あの、やっぱり


 もふもふしてもいいですか?



















 む ず か し か っ た。


 構成がしっかりしてるからこそ展開が多くて抜粋も非常に多くなりました。


 今までで一番唸りながら書いていたかもしれません。


 物語は大好きなのですが、一つだけ。一つだけ文句を言わせてください!


 ココちゃんとセイジくんの漢字変換がめんどくさすぎる⁉︎←いちゃもん。


 ちょくちょく読み直しましたけど、やはり改めてキャラクターの心の揺れ動き加減が絶妙ですね。やっぱりこうでなくっちゃ。


 そんなわけで、次も難関でしょう。


 ワイノ・ワイノ、いっきまーす。

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