みんなー読書しようぜ!(気分転換)
さて、94万字を読みきったことで、すこし肩の荷が降りたとともに疲労感がけっこうな感じです。
もうここでしれっと企画終了だぜ! ってしてしまえば、なんかよくがんばったね的な空気で有耶無耶にできていいんじゃないかとか思いましたが←思うな
いやいやまだ待ってる方々いるし……残りの文字数は怖くて計算してないのですが、次のも30万字だし、最低後2作品は50万字くらいのあった気がします(漏らすぞ)。
すでにおそらく前回読んだ文字数を超えたんじゃないかと思います。
しかもすでに感想文10万字越え。
最後にPV数もおそらく後2、3回更新したら前回の紹介させてくださいのPV数超えるんですよね。
皆様に支えられてとても嬉しいです。
でも見る人多いせいで投げ出せないことが悩みですね(責任転嫁)。
ってわけで今回も気分転換会。
エッセイや作品紹介内や近況ノートかなんかで何回か名前出してる作品はありますが、まあここで書きます。
皆さんの魂の一冊的なものが気になるということもありますし、一回どうして自分が小説が好きなのかということを思い返す意味でも、改めて思い起こしましょう。
プロの作品を思い出して、「この感動が欲しかったんだー」と気分転換を図ることが一番の目的ということで!
まあまた番外編なので、読まれても読まなくても構わないものですので、どうぞご自由にしてください。
もし見られるならごゆるりと。ほら、コーヒーでもお飲みください(未だ残っているバレンタインブレンドコーヒー)。
普段好き好んで購入するというわけではないのですが、なんだかんだで恋愛要素はエンタメ小説においては普遍的に扱われるもので、恋愛やラブコメに関する小説です。
百瀬、こっちを向いて。内、『小梅が通る』 中田永一
表題作は映画になっているみたいですが、短編(カクヨム的な定義では中編くらい)が4本収録されてまして、その中の『小梅が通る』という作品が一番好きですね。
クラス内では他の人の邪魔にならないようにすべきグループとして楽しく暮らしている柚木。
実はキッズモデルを勤めるほどに容姿端麗。けれどとある経験から学校では可愛く見えないブスメイクを施して生活していた。
そんな中、お調子者だがいじられ役なクラスメイトの山本寛太に正体がバレかけて、「あれは妹の小梅だ」とごまかします。
すると寛太から「小梅ちゃんに一目惚れしたから紹介して欲しい」としつこく迫られることになり……。
一見すると嫌味的な設定だったり、軟派っぽい第一印象の寛太にはあまり良い感情を持たなさそうな設定です。
で、ぶっちゃけ柚木がブスメイクをするようになった理由は、思春期ではよくあることだと言ってしまえばその通りな出来事です。
極端な対処だと思わずにはいられないですが、1のダメージが10にも100にもなる繊細な時期であることに加えて、舞台配置が本当にお見事です。
他の人の邪魔にならないように生きるグループ、お調子者男子ががんばる理由、柚木の傷と本音。
恋愛というには少し物足りないかもしれませんが、変化した末のこの物語におけるエンディングのちょっとしたすれ違いは、非常に可愛らしくてやられました。
いやマジで柚木も寛太も二人とも可愛らしい。赤面やら温かみやらを貰えました。
『好き好き大好き超愛してる』 舞城王太郎
愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。温かい場所で、あるいは涼しい場所で、とにかく心地よい場所で、それぞれの好きな人たちに囲まれて楽しく暮らしてほしい。
そんな一風変わった祈りから始まる物語の内容も、一風変わった展開を見せる。
彼女の中で謎の生物が這い回り、もしかしたら身体を切断しなければいけないかもしれない。けれど彼女はそれが怖い。たとえば腕を失った時、腕があった頃の自分と同質だと言えるのだろうか。それは自分と言えるのだろうか。
哲学的な問いや幻想世界での戦い。アダムは適合者の少女たるイヴと神々への戦いに挑む。
夢の中で見つけた女の子が運命の相手だと探し回る。
恋人が亡くなったことに纏わるなんらかの残滓を、小説に落とし込むことで恋人の家族に責められたりもする。
好きの形とはなんだろう。愛とはなんだろう。
言ってしまうとものすごくカオスです。なんの前情報もなしに、というかこの小説をネットで見かけたら完全に途中で読むのやめます。
それでも、作者の作風を知っていると、面白くて仕方がないです。
メタ視点を多用し、わけのわからない展開もなんらかの示唆であり、暗喩なんです。それでいて、実は伝えたいことはとってもシンプルなんです。
それでぶっちゃけ彼女は亡くなります。
亡くなった後の彼女に仕込まれたやり口の絶妙さ、彼女が亡くなったことに現在においては折り合いをつけないというエンディング。
この物語を読み終えた時の、最後のフレーズが本当に好きです。
バカでいい。間違いばかりでいい。
愛し過ぎるというのはそういうことなのだ。そしてそれぐらいで、人を愛するにはちょうどなのだ。
バカなことをして間違ったことをして正しく愛せたわけではないしただしい関係だったのかどうかもわからないけど今でも愛している気持ちだけはあって前に進めない現状。
愛し過ぎるっていうのは、きっとそういうことなのかもしれない。
この作者様は多分、理解されないタイプの天才なんじゃないかと感じます。
『夜は短し、歩けよ乙女』 森見登美彦
大学の後輩である黒髪の乙女に恋をする私は、先輩の結婚式の二次会から抜け出す黒髪の乙女を発見した。
これは外堀を埋め続けた私に訪れた転機。
ぜひともこの機会に仲良くなってみせようぞ。
そう意気込む私と黒髪の乙女に訪れる夜の街の不思議な洗礼。
ズボンとパンツを奪われる、魅惑の偽電気ブラン、うなぎのように詭弁を弄してぬらぬらと生きる詭弁論部。桃色ブリーフに古本市の神さま。
高利貸しの爺さんに天狗。
わけのわからない出会いと不可思議な展開、奇跡の連続。
とてもとても可愛らしく、お酒を呑んだ心地よさに揺られるようなファンタジーラブコメです。
すべての出逢いも、何かの御縁。
出逢いの奇跡と基本的にひどい目にあうさえない主人公。
好奇心旺盛で何事も楽しむ才能をもった黒髪の乙女。
交互に語られる夜のどんちゃん騒ぎ、文化祭でのゲリラ演劇騒ぎなど、笑って泣けるドタバタ騒ぎ。
誰しも少しバカで案外ゲスいけれども、どこか憎めない人情溢れる人物ばかり。
正直この世はアホばかり。願いが叶うまでパンツを履き替えないとかいう男気は、人としては間違っているのに、応援せずにはいられない。
ふわふわっとしたその恋の結末。
心がふわふわ温まります。
そしてこの物語を辿っていったラストシーン。
今までの出来事って、そういえばどんな経験をしたんだろうか。聞いてみたいな。
そして思い返しながら待ち合わせをした最後の一言で、うっかり泣いてしまいます。
別に誰も死ななければ悲劇はないです。ぶっちゃけ大きく感動する出来事はないんです。
でも、物語から溢れ出た温度が胸をくすぐって、うっかりと涙腺が応えてしまうんです。
とても幸せな気持ちになれる物語です。
お次はミステリー。事件が起きたり不思議を解き明かしたりと、今でも尚人気のジャンルですよね。
最近はあまり読みませんが、一時期ミステリーばかり読み漁ってました。その中からお気に入りを紹介しますね。
『告白』 湊かなえ
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」
中学校の女性教師のホームルームでの告白から物語ははじまる。
小さな女の子がプールの上で浮いて亡くなっていたという悲しい事故。事故の真相を探る過程が物語の主題ではなく、この事故が起きるに至ったキャラクターの感情や行動。
この出来事が起きたことによる、周囲や状況の変化。
病的なまでに真に迫る描写の濃密さに圧倒されます。
こういった物語を読むと、下卑た心象を再認識してしまいます。
人ってやっぱり、どうしようもなく悲劇や悪意からもカタルシスを得るんだなあって。
事故が起きるに至った異常なキャラクター性。病的とも思えるラストの復讐劇。
最初から最後まで夢中で読みました。もう何が面白いか説明するのも難しいです。
面白すぎて、読んだ当時は大学をサボったくらいです(ダメ野郎)。
まあ善意であれ悪意であれ、人がやることは面白いということです。
『きみとぼくの壊れた世界』 西尾維新
禁じられた一線を現在進行形で踏み越えつつある兄妹、
夜月を狙う後輩が、密室の学校内で殺された。
保健室にひきこもる、病院坂黒猫とともに事件の真相を探る。
西尾維新と言えば戯言シリーズに化物語シリーズ掟上今日子シリーズなどヒット作を飛ばしている現代エンタメ作家として有名ですが、最高傑作は個人的にこれです。
西尾維新の初期作品の一つですが、この時期の西尾維新にしか書けない尖り具合があります。偏見と今以上に鬱陶しい表現。まだ若さの勢いが存分に発揮されているので、人を選びそうです。
今までの人生で間違えたことがないと豪語する様刻は、今できることの中で最善手のみを選び続けたからこそ、間違えたことがないと言い切ります。
あまりにも強すぎる信念、起きてしまった殺人事件。
でもぶっちゃけ事件のトリックはどうでも良くて、面白いのはキャラクターの心情による過剰な行動とその収束のさせ方です。
妹を過剰に守りすぎた兄、兄に依存しすぎた妹、恋愛がらみのやりすぎた思いやり。病院坂黒猫というジョーカー。
今まで一切の間違いがなかった彼の最後の独白は、最高に衝撃的でした。
少し風が吹いて仕舞えば、あっさりと崩れ落ちそうな脆い世界。
最高に最悪なハッピーエンド。
お見事です。
思ったより長過ぎる。
好きなことについてついつい語りすぎてしまうのは悪い癖です。
今回は次で最後にします。
まあ続きも次の話で書くんですがね(気分転換長っ)
さみしさの周波数内、『未来予報 あした、晴れればいい。』 乙一
「どちらかが死ななければ、お前らいつか結婚するぜ」
未来が見えるなんていうクラスメイトに予言されて、それ以来彼女と眼を合わせることができなくなった。
もともとそんなに話す方ではなかったとはいえ、どんどんと疎遠になっていく僕と彼女。
この気持ちはきっと、恋愛なんかじゃない。
恋愛とは言い難い、不思議な距離感。
幼い一言で、疎遠になってしまった僕と彼女。長年合わないどころか会話すらもない。
けど、なぜだかずっと心に引っかかっている。
ふとした時、何の関係もないはずなのに思い出してしまう彼女に関する感情。その名前は、よくわかりません。
恋愛とは少し違った距離感が、新鮮でとても面白いです。
辛い時、失敗した時にふと考えてしまう。結婚すると言われた未来。
その未来の行方に辿り着いた時、思わず泣いてしまいます。
60ページほどの短編にも関わらず、ここまで完璧な構成と心情。胸を打つ展開に、心奪われるラストシーン。
不思議と、決して読後感は悪くない。
未来の予報なんて、天気予報と変わらないものなんです。
ただ願う。
あした、晴れればいい。
ソラくんの散歩に行ってきます。
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