第67話 常連たちの集い2

 今日は18時と19時に連続投稿予定

  18時が第66話 「掲示板回」

  19時が第67話 「常連たちの集い2」

 となります。

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##ゆーなちゃんの探索を眺める者たちの秘密の集い##



大ムーン:ういっす、来たぞー。


草蛇:ばんわー


糸姫:あんたはんが最後やでー


大ムーン:おぉ、そりゃすまんかった。ちとクラン会議が長引いてしまったんだわ。


くろえー:ばんわ


SAN蔵:おう……すまんな、忙しいのに来てもらって


大ムーン:だいじょぶだいじょぶ。長くなったのも、ゆーなちゃんの配信観たせいでワイバーンを一狩り行こうぜ!喰いたいっ!!ってウチの団長たちがいきなり騒ぎだしたっていうだけのことだからな。だいじょうぶだ


草蛇:あー……(察し


糸姫:あれ? そっち、上層部は思ってたより堅っ苦しくないん??


SAN蔵:あああああああ


大ムーン:おう、勘違いされがちだけどウチの発端は、あそこのダンジョンでの横暴に対抗するためにできた中小クランの互助会みたいなもんだったからな。流れで上に置かれた初期メンバーたちってのは割と普通っていうか自由なとこが多いやつらだと思うぞ……って、SAN蔵はどうしたんだよ?


くろえー:気にしなくていいわよ。変にゆーなちゃんを守ろうと策を練って動いた結果、自爆したってだけだもの


大ムーン:策? 自爆??


SAN蔵:うっせぇ!まさかゆーなちゃんがあんなジョーカー出してくるとか誰が思うかよ!!


糸姫:は?ゆーなちゃんやで??


SAN蔵:あああああああ!くそっ、それ言われると何も言い返せねぇ!!


草蛇:いったいどうしたんだよ……説明plz


くろえー:ほら、探索者ギルドがゆーなちゃん相手に詐欺・横領してたこと認めたでしょ


草蛇:おう。


くろえー:その上に特例認定でB級昇格なんてさせたもんだから、ゆーなちゃんがマスコミに注目されるのなんてまるわかりだったんで、ゆーなちゃんがあまりあいつらの餌食にならないようにって、SAN蔵ってば気を使っていろいろ陰で動いてたわけなのよ


糸姫:あー、こっちにもゆーなちゃんのお爺様たちの警護の依頼をかけてきたりしてたヤツとかかの?あ、そういえばゆーなちゃんをB級に上げたのは良い判断じゃ。これでゆーなちゃんが関西にも来てくれそうじゃからの


くろえー:ええ、それも含めてね。糸姫、そっちの警護については任せるからね。で、そのマスコミ対策の一環として、上の首の挿げ替えにするネタとか出してまで探索者ギルドの方に注目集めて、それでゆーなちゃんから大衆やマスコミの視線を逸らさせようとしてたってのに……そのゆーなちゃんがさっきの配信でいろいろ爆弾ネタだしてきたでしょ


大ムーン:あー、地上でのモンスター料理のに使ったあの機械とか、魔力についての解説だとか……コラボのこととかもあったよなぁ


糸姫:なぁ、あのスカーレットのメンバー……特におりんとかいうの、一度処してやりたいんじゃが、ヤってもいいかの?


大ムーン:お ち つ け。気持ちはわかるところがあるが、


草蛇:ゆーなちゃんの手料理……食べたいナー( ;∀;)


くろえー:あんたら、話を戻すわよ? で、SAN蔵ってば、ゆーなちゃんが注目を浴びすぎるのを避けさせるために、目を逸らさせようとして探索者ギルドについてのいろいろな暴露ネタをわざと流出させってたのに……その直後にあの配信内容をだされちゃったわけなのよ。おかげで全部無駄になっちゃったみたいでねぇ。


大ムーン:あー……まぁ、あれだけ爆弾ネタをいきなり大量にぶち込まれたら、探索者ギルドの炎上ネタのインパクトなんて吹っ飛んじまうよなぁ。


SAN蔵:ゆーなちゃんからはマスコミを掃除するってことは聞いてたんだよ!だからそれについては警察にも事前に根回ししたし、てっきりそれだけだと思ってたんだって!!まさかあんな爆弾をさらに持ってくるだとか、ゆーなちゃんからは聞いてなかったんだよぉぉぉ!!!!!!


くろえー:詰めが甘かったわね。自業自得よ。


草蛇:あの地上で魔術使えるようになる機械、あれだけでもインパクトでかかったからなぁ。探索者でない俺でも、アレがやばい技術な代物だってことはわかるもんだったし。


くろえー:すでにゆーなちゃんが出してきたアレの価値に気づいた一部の議員連中が「あれは個人が持っていていいものではない!」「あんな貴重な物を子どもが私物化してるなど問題外だ!取り上げろ!!」とか言い出し始めてたりしてきてんのよね。頭が痛いわ。しかも、どうも私に断りなくそいつらと繋がってるウチの連中の一部が交渉役だとかいって動いてってるみたいで……いったいどんな法的根拠で個人の私物を国が取り上げられるとか考えてんのかしらね、そのアホども。この国では私有財産は29条で護られてるっていうのに。


大ムーン:そんなアホが政治家や官僚にも居てんのかよ。でも、いくらすごいって言っても、単に魔術が地上でも使えるようになるってだけの機械だろ?


くろえー:それを実現させるために、世界各国が何千億とかけて研究してる真っ最中の、それも基礎研究すらまだ上手くいってないオーバーテクノロジーなんですけど?なにせ魔術を地上でも使えるようになれば、そのアドバンテージっては大きいものなんだし。


草蛇:すごいもんだとは思ったが、そこまで目の色変えるようなもんなのか?


くろえー:そうねぇ……例えば医療分野であれば、病院で治癒魔術を使用することができるようになるわよね。そうなれば大怪我や急性中毒などの重体の治癒魔術での治療が、治癒魔術の効果可能時間内でさえあれば地上の医療機関でもできるようになってくるのよ。怪我の種類や毒の判別の必要なく副作用を気にせずにヒールや解毒キュア・ポイズンで治療できるってなれば、それだけで助かる命や身体が多くなるってことになるわね。


草蛇:あー、なるほど。でも、それならダンジョン内の上層にでも病院を作っちまえばよくね?


SAN蔵:それ、計画されたことはあるがトラブル続出だったんだよ。医療機材をダンジョンに置いておくと半日だれも触らなかったらアイテム放棄したのと同じ扱いになってるのか、ダンジョンにいつの間にやら吸収されてしまったりしてなぁ……


草蛇:なるほど。廃棄アイテムとダンジョン的には同じ扱いになったってことか……


SAN蔵:しかも、人を大量に一か所に常駐させつづけるとダンジョンのモンスターが徐々に数を増やして襲撃してくるわ、同一人物を何日も居させ続けるとイレギュラーが発生しやすくなる傾向があるようだとかでな。あきらめるしかなかったんだよ


くろえー:なので、ダンジョン上層部での医療センターの設立は計画はされたものの実験段階で立ち消えになっちゃったのよね。でも、ゆーなちゃんのあの機械があれば一度は立ち消えになった治療魔術による救急医療センターが、地上で実現できるようになるでしょう。もしもそれが設立できれば、大事故や大災害なんかが起きても多くの命を助けられるようになるかもしれないし、中毒患者なんかの場合は毒の特定の必要なく治療することができるようになるもの。しかも魔術での治療は快癒までの期間がないにも等しいから、労働者が治療を受けた場合でも、休職してなきゃいけない期間が削減されるのよ。GDPがそれだけ増加することだって見込まれるわね


大ムーン:考えてみれば、金持ちとか要人の警護って面でも効果的なんだよなぁ。攻撃を1~2回防げる程度のシールドを貼れるだけでも、狙撃や爆弾によるテロや暗殺から要人が身を守れるようになるだろうし……最初の初撃さえ防げれば、SPがカウンターアタックすることやガードに入ることで護るのはしやすくなりそうだ


くろえー:だから外交などでも強みになるでしょうね。それに、例えば中東では水の確保ができないからこそ砂漠化が進んでいるのだけど、水魔術の使い手がいれば植物を育てるために必要な水を魔術で生み出し続けられるようになるわ。実際、UAEが実験的に砂漠にあるダンジョン内で水や土を魔術でださせ、それをダンジョン外へ運んで緑化を促進させる研究を行ってるもの。あの機械、魔水晶を魔力散布の源として使うことになるみたいだけど、砂漠を緑化することが金で解決できるならってことで水魔術を使える探索者を集めてるようなあの国とかだと欲しがることでしょうね。そういう点を含めても、いろんな外交材料との引き換えとするために外務省あたりが欲しがってることでしょう。


草蛇:そういうことでいうなら、輸送や宇宙開発分野でも欲しがりそうだよなー。軽量化の魔術と組み合わせることで物体を軽量化させられれば、輸送コストが激減するだろ。特に宇宙にシャトルやロケットを打ち出すのが、シャトルやロケット自体を軽量化できればだいぶん燃料の削減とかにもつながって発展するんじゃね?


SAN蔵:あとはテロや軍事だろうな。攻撃系の魔術が使えれば身一つでどこでもテロを起こせるようになる。今回のゆーなちゃんのだとできないだろうが、原理や製造方法がわかれば大型・広域化させるのも、逆に小型・携帯化させるのも、技術開発を進めていくことで可能になることだろう。そうして持ち運びできるサイズの物を持った兵士が中級の攻撃魔術くらいを使えるとかなれば、兵士一人一人が戦車並みの兵団の誕生になるぞ。上級魔術なんぞ使えた場合にはその兵士は人の形をした戦略兵器だ。実際、シベリアのダンジョン国の首長がそういうもんだろ。


糸姫:ほーん。みんないろいろ考えるんやねぇ。ダンジョンでばかすか魔術撃ってても、そんなんいちいち考えたこともなかったわぁ


大ムーン:偉いさんたちは面倒なことをすぐに思い浮かぶもんだと感心するよな


くろえー:おかげで、すでに外務・警察・公安の各所から各超大国の工作員が日本に向かいだしたとかいう情報までこっちにも来てんのよねー……すでに国内に居る、公式には各国の大使館職員や武官ってなってる工作員たちについても、そいつらが急に活発に動き出したりしてるみたいだって話だし。そんなもんだから公安の外事課と内調が悲鳴を上げてたわよ。さっき言った議員連中も、どうも半数以上がそいつらの意を受けて騒ぎ出したみたいだったし。もっとも、動き出した工作員は東西両陣営ともだから、まずはそいつら同士で潰しあいになるんじゃないかしら?


大ムーン:それ、ゆーなちゃんはだいじょうぶなのか?


くろえー:表向きについては、当面はだいじょうぶだと思うわよ。外国勢力がゆーなちゃんに接触しに行ったとしても、表側からなら、まずは金銭交渉とかででしょうしね。いきなりゆーなちゃんを拉致して脅し取ろうとするとかはありえないわよ。彼女自身が製造したってわけじゃないようだもの。

 ただ、配信の様子を見た限りだとだれかに譲る気はないみたいだから、そのうち強奪しようとするのがでてくるだとか、その製造者を教えろだとか脅しにいくのが出てくる危険性については、十分危惧しておくべきでしょうね。


SAN蔵:なので、公安にはいまのうちからゆーなちゃんの警護をするように要請を出しておいたぞ。


くろえー:だから、当面は裏で起きるのだって各国の工作員同士が互いにけん制しあったり潰しあうのが起きるくらいがほとんどじゃないかしら。むしろ問題は、ゆーなちゃん家に直接乗り込んで強盗に見せかけて奪おうとする短絡的なのが出てこないかどうかだけど……だから、SAN蔵と一緒に公安にはすでに渡りをつけてゆーなちゃん家周辺を常駐的に警護させるようにしてもらったのよね。仮に日雇い犯罪者闇バイトだとかがゆーなちゃん家に乗り込もうとでもしたら、即、警察か公安かたちによって、逮捕・通報されることになるでしょうし。


SAN蔵:くろえーの公安への交渉、横で見てて相手に同情したからなー。赤鬼の異名を持つ公安課長が青鬼になってるとか、何聞かせたらああなるんじゃ、まったく。


くろえー:こういう時、事前に貸しをいろんなところに作っておいたり弱みを握っておくと、お願いごとってしやすくなるからいいわよ。SAN蔵も普段からもっと手広く準備しときなさいな。


SAN蔵:あ、手広くといえば自衛隊のあやつはどうなってる?魔水晶の件で連絡とったら、予想通り全部ほしいけど予算が捻出されないってことで騒いでいたんだが。ダンジョン研究者としても魔力工学者としても我が国で第一人者となってるあのマッドサイエンティストが、アレを見ておとなしくしとるとは思えんのだけど。


くろえー:竹ノ塚博士のこと?あの子ならたしかにゆーなちゃんの配信のを見てあの機械を欲しがっていたけれど、まずはゆーなちゃんの配信で出た魔力関連の話を検証・証明するってことの方でひとまずは満足したみたいよ。そういえば、ちょうど博士の姉がゆーなちゃんの学校の教員をしてるんだそうで、ゆーなちゃんと会って直接いろいろ質問したいとは言ってたわねー


糸姫:会わせるのかえ?


くろえー:いえ、その要望に関しては却下したわ。いまの状況で竹ノ塚博士までゆーなちゃんに接触させたら、どこまでの騒ぎになってくるかもはや完全に予想がつかなくなるもの。


SAN蔵:竹ノ塚博士とゆーなちゃんは年も近いからなぁ……二人とも性根は良い子だし、ダンジョンについてで話が合う話題もあるからすぐに仲良くなれるんだろけど、そうなったら相乗効果で今度はどんな爆弾を出してくることになるか予想もつかないんだよなぁ


草蛇:んじゃ、当面はどうするんだ?


SAN蔵:とりあえず、糸姫には事前にお願いした通り、ゆーなちゃんの祖父母殿の警護を頼みたい。大ムーンには探索者界隈の抑えの方だな。議員連中とつながりがあることで、下層お散歩お昼寝配信事件直後の後はいったんおとなしくしていた連中が動かないとは思えないんだよ。こっちの方でもB級にあげたことを理由に今後はゆーなちゃんに関してのトラブル時には大きく干渉していくつもりだが、先にウチんとこの情報を流してこっちに視線を向けさせようとした失敗のせいで、いまは動きづらくなってしまったんだよなぁ……


くろえー:わたしの方は、探索庁を中心に公権力関連の締め上げをしてくってことでいいわよね。


SAN蔵:そっちに関してはむしろ任せるしかない件。


糸姫:了承したのじゃ。ではこっちのことについては任せるがよい。ただし、その代わりそっちのことはそっちのメンバーに任せるからの。万事上手く差配せいよ?


大ムーン:うし、こっちも了解だ。気をつけておくよ。


草蛇:よーし、お前らがんばれー。一般人の俺はおまえらの頑張りを応援しとくぜ


大ムーン:働けよw


草蛇:働けって言われても、お前ら逸般人とは違う俺には原稿を描く以外に何もできないからなーw はっはっはっwww



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