第三十六話 柾の想い③
あちらの世界では、土地守りは年をとらないらしい。十代後半で成長が止まる。
僕は樹里ちゃんの寝顔を見ながら思う。
樹里ちゃんは年を重ねた。でも、たぶん、土地守りの魂を持っていた影響で、ふつうの人よりも全然若い。彬と並んで歩いていたら、年の離れたきょうだいだと思われてしまうくらいだ。本人は「年をとっちゃったな」なんて言っているけれど。いまいち自分のことを分かっていない。
僕はくすっと笑った。
たぶん、僕がどれくらい片思いをしていたかも、全然分かっていない。自分がどれくらい美しい姿をしているのかも。
樹里ちゃんが自信がなさげなのは、たぶん生育環境に起因している。伊東家は青栁家の傍流で、樹里ちゃんは生まれたときから「土地守り」候補としてマークされていた。だから、樹里ちゃんの両親は腫物を扱うように、接してしまった。愛情がなかったわけじゃない。ただ、青栁の圧力をはねのけるほどの強さがなかっただけだ。
でも、大丈夫。
僕がいるから。
「土地守り」としての魂が失われても、僕は相変わらず樹里ちゃんを感じることが出来る。確かに少し感じが変わったけれど、本質は変わらない。愛しいきみのまま。
美しい緑の光のきみ。
僕は、あらゆるものからきみを護ってあげたいんだ。
これからも、ずっと――
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