第六話 夢ゆめ②
あたしは自分の手を見た。そうして、長くて艶のある髪を触った。
夢? それとも?
あたしはまた宙に浮き、枯れた地に赴いた。
そうして、降り立つ。
分かる。
この地は、あたしを必要としている。
あたしは目を閉じ、今度は両腕を広げ、天を包むような形で祈った――緑が蘇りますように。豊かな地になりますように。
ざあっという風の音が聞こえたような気がした。
分かる。
緑が蘇っていく。土地が潤っていく。そして、植物だけではなく動物も蘇っていく。
……きれいだ。
緑が囁いていた。青い若葉。嬉しそうにさざめく。
――ありがとう、ありがとう、ありがとう……土地守りよ。
――戻って来てくれて、ありがとう。
――ありがとうありがとうありがとう……
葉のさざめき、下草のゆらぎ、花びらのゆれ、……全てが歓喜の声を挙げていた。陽の光がきらきらしながら、緑を照らす。緑が陽を跳ね返して、いっそう煌めきを増していた。
あたしは踊るように歩きながら、緑の中を進んで行った。緑が揺れ、若葉が芽生え、或いは花開いた。動物たちが姿を現し、鳥たちも歌をうたった。虫たちも活動を始め、色とりどりの蝶がひらひらと舞った。
緑の地と枯れた茶色の地の境目に足を踏み入れると、あたしの足元から緑が蘇っていった。
大地が蘇り、生命が芽吹く。
――土地守りの存在は、その土地を豊かにし、恵みをもたらす。
声の言うことが、分かった。――実感として。
ああ、あたしはこの地をもっと豊かに美しくしたい。立ち枯れた樹々をよみがえらせたい。そして、あるべき姿にしたい。
あたしは茶色く枯れた地を次々に緑に変えていった。
ああ、全てを緑に変えてゆきたい。陽の光に緑が煌めく。きらきらとしていて、眩しいほどだった。なんて美しいのだろう。緑に光が乱反射していて、世界を包み込んでいる。
そうして、緑の光に目を細めた瞬間――遠くで異質な音がして。
――吸い込まれた。
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