第三十五話 彬②
それから、毎日は穏やかに過ぎた。
うちでは、
学校では、蘇芳は友だちといることが多くなった。あと少しでいなくなることが分かったせいか、一気に友だちが増えたように見えた。……すごく切なかった。
「
顔を上げると
以前、澪といっしょにお昼ごはんを食べていたベンチに並んで座る。
澪とのことは、ほんとうにずっと昔のことみたいだ。
「彬、ごめんね」
「え?」
何か
「……わたし、彬にひどいこと、、言っちゃった」
「……そんなこと、ないよ」
むしろ、俺の方がひどかったと、今ではそう思える。
「わたし、彬の笑顔の仮面を結局剥がすことが出来なかった」
「あー、それは、ごめん」
澪はちょっと笑って「わたしなら出来るかなって思ったんだけど、出来なかったよ」と言った。そして「蘇芳さんは出来たんだね」と。
蘇芳。
「ほら、その顔。……そんな顔、見たことなかったよ。あーあ、もう」
「……蘇芳は親戚の子で」
「うん、でも、好きでしょう? すぐに分かるよ」
「……そんなに?」
「うん。ばればれ。みんな、知ってる」
「……恥ずかしいんだけど」
「でも、好きになれたんだもん、いいじゃない! わたしも、彬くん好きになったこと、後悔していないよ?」
と、澪は、つきあっていたころには見せたことのない笑顔を見せた。
「……ありがとう」
澪はふふっと笑って「蘇芳さんと、仲良くね! ほら、あそこにいるよ。わたしはもう行くね」と言って、手を振って去って行った。
澪が指さした方を見ると、蘇芳が川上といっしょにいて、泣きそうな顔をしていた。
「蘇芳」
「彬……」
川上は「じゃ、ごゆっくり! 次の授業は自習だからさぼっても平気だよ。見つからないようにね!」と言って去って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます