第十六節 好きだから【彬】
第三十四話 彬①
「二週間後……そんなに早く……」
俺と
それは俺の予想よりも早い日にちで――あと二週間しか、蘇芳といっしょにいられないんだ。
「これは決定事項だ」
俺たちは、当日の手順や当日に至るまでの準備について聞き、帰途に着いた。
俺は蘇芳と手を繋いで家まで帰る。
このまま、蘇芳を連れ去りたい。
でも、それは現実的な手段ではなかったし、また蘇芳もそれを望んでいないことがよく分かっていたので、口にすら出せなかった。
公園を見ると、あのときの公園を思い出す。
――いま、キスしたり抱きしめたりしてしまうと、蘇芳を見送れなくなりそうだから、手を繋ぐまでにしていた。
ほんとうは。
ほんとうは、もっと触れていたい。もっとずっと。深く。
だけど。
「あと、二週間か……」
蘇芳がつぶやく。
「うん」
「あたし、二週間、ふつうに過ごしたい」
「……うん」
「
「俺とは?」
「……出来るだけ、いっしょにいたいな」
「うん」
俺は握った手に力を込めて「俺も」と答えた。それが精いっぱいだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます