第十五話 彬②

 見ると、みおと澪の友だちの林さんがいた。その後ろには数人澪の友だちがいた。「青栁あおやぎくん!」は林さんだった。澪の目は赤かった。明らかに泣いたあと。

 やばい。


「なんで、待ち合わせ場所に来ないの⁉」

「あー、うん、ごめん」

「連絡くらい出来るよね?」いや、出来なかったんだよね。

「ごめん」

「話があるって言ってんのに!」

「ごめん」

「今日は澪といっしょに帰るよね?」

「あー、それはちょっと」と、蘇芳すおうを見る。そうしたら、今まで黙っていた澪が「もういいよ、なっちゃん」と言って、俺をじっと見て言った。


「彬、もう別れよう」

「え?」いきなり?

「彬、わたしのこと、好きじゃないよね? どこかに誘うのもいつもわたし。告白して、OKもらえて嬉しかったけど、でも、わたしはわたしのこと、好きになって欲しかったの」

「……好きだよ」

「嘘つき!」

 澪はそう言って、目に涙を溜めて走り去った。

「澪!」と言って、澪の友だちは澪を追いかける。林さんは俺を睨みつけるのを忘れなかった。


 あーあ。終わった。平和な学校生活が終わった。女子を敵に回していいことは一つもない。

 今まではこんなふうにならないように、うまくやっていたんだけどな。

 クラスのみんなは事の成り行きをじっと見ているし。あーあ。

 俺はお弁当の続きを食べ始めた。

 見ると、蘇芳も待っていたみたいだった。


「ごめん、雰囲気悪くて」

「いや、おもしろかった」

「は? いや、俺、おもしろくないけど。別れちゃったし」

「でも、彬、あの子のこと、好きじゃないじゃない」

「え?」

「樹里のことのが、好きだよね?」

 って、おい、何言ってんだ、こいつ!

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