第七節 失恋が確定し、蘇芳といっしょの帰り道で【彬】
第十四話 彬①
蘇芳に視線が集まる。
目立つよなあ。いくら黒髪黒瞳に見えていても。
蘇芳はふわふわの髪を一つに束ねて、髪を揺らしながら歩く。意志の強そうな口元もその瞳の強さも隠しようがない。
俺は蘇芳の警護と見張り役なのである、つまり。
警護……より、見張り役の意味合いが強いだろうなあ。
蘇芳が隣に座り、俺を見た。
いかん、溜め息が出そうになった。
ふと
なんで、怖い顔なんだろうなあ。
スマホが振動して、見ると澪からLINEが来ていた。
――今日の昼休み、話せる?
――いいよ
お昼ごはんはたいてい澪と食べていた。ここでちゃんと話せるといいな。
という俺の願いはむなしく散った。
何しろ、蘇芳が離れないのである。
「ちょっと俺、行かなくちゃいけないところがあって」
と、澪といつもお昼ごはんを食べている中庭のベンチのところに行こうとすると、蘇芳にブレザーの端を摑まれ「駄目」と言われた。
「いや、でも」
「彬、あたしを一人にしていいの?」
「いや、たぶん、少しくらい、大丈夫だよね?」
「
「いや、今日は頼む! 俺ちょっと」
「駄目」
蘇芳は俺のブレザーをしっかり掴んで放さない。
仕方がないので、席でお弁当を食べることにする。
あ、その前に澪にLINEしなくちゃ。
スマホを取り出すと、蘇芳がすっと俺のスマホを取り上げる。
「ちょっ、何するんだよ」
「食べるとき、スマホ禁止。樹里が言ってた」
「いや、でもね?」
「駄目。食べ終わったら返す」
絶対に返してくれそうにないので、ともかくお弁当を食べる。
当然ながら、同じお弁当だ。
「なんか話して」
「は?」
「だから、昨日の
「はあ」
昨日、何話してたっけな?
「……樹里が、ごはんはみんなでおしゃべりしながら、食べるとおいしいのよって」
なぜか、頬を染めながら言う。こいつ、なんでこんなに母さんになついてんだろ。
「……俺んち、どう? 何か困ってない?」
「困ってない。……樹里が優しい」
「ああ、母さんは優しいね」
「……お母さんって、みんな樹里みたいなの?」
「うーん、どうだろう? 人によるんじゃない?」
とそこへいきなり、「
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