第三十九話 蘇芳③

 そして、満月の夜。


 あたしは、あきら樹里じゅりまさきみなとと、まきさんまゆきさんたち本家の人たちに見送られ、五色ごしきの地に還った。


 もう一つの満月が浮かびあがり、ああ、もうすぐ還るんだな、ということが直感的に分かった。あれに触れたら五色ごしきの地へ還ることが出来る。あたしはその直前に、彬に「待っているから」と耳元で囁くのを忘れなかった。彬の耳元で囁いて顔を上げて樹里と目が合った。樹里は「それでいいのよ」って言っている気がした。


 あたしは深くお辞儀をして、満月に触れ――五色ごしきの地へ還って行った――

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