第二十三話 蘇芳②

 学校に着いたら、はるちゃんやみっちゃん、レナちゃんたちがあたしのところに来た。

 そして、「今日頑張ろうね!」って言い合う。きゃー、頑張る‼

 あたしねあたしね、バレーボール大会、すっごく楽しみにしていたの!

 はるちゃんたちと練習頑張ったし!

 試合中、すっごく一生懸命に真面目にやるんだけど、みんな笑顔で、失敗しても「どんまい!」って声をかけてくれて、あたし、こんなの初めてって思った。サーブが決まったりしたら、みんなが喜んでくれた。みんなでこころを一つにして、何かをやるって、こんな気持ちになるんだ。すっごくわくわくした。


 準決勝で負けちゃったけど、楽しかったんだ。

 試合が終わったあと、あきらに会う。

「残念だったね」

 と、彬が言う。あたしは笑って「でも、楽しかった!」と答える。


 彬と並んで、試合を眺める。

 ああいいな、こういうの。

 あたし、ずっとさみしかったけれど、最近全然さみしくないよ。

 樹里じゅりまさきも優しいし、みなとも好き。はるちゃんたちとバレーボールの練習するのも楽しかった! みんなで何かするのって楽しいんだね。


 それから、彬。

 彬がいつもいっしょにいてくれる。

 あたしは彬の横顔をそっと盗み見た。

 柊護しゅうごに似ていると思ったけど、今では似ているとは思わない。彬は彬だ。


 そのとき。

 バレーボールの試合を見ていたら、すっぽ抜けたボールが女の子を直撃しそうになって、思わずボールを宙で燃やし尽くしてしまった――まずい、つい、力を止められなくて! どうしよう、燃えかすが落ちてしまう!

 と、思ったら、それは一瞬で消えた。


 彬だよね?

「ごめん、つい」コントロールが出来なくて。

「いいよ」と彬は笑って、「あの子が痛い思いをしなくて済んだから」と言った。

 あたしは「うん!」と言って、笑った。

 ありがとう、彬。


 彬、好きだよ。


「さて。じゃ、決勝戦、行ってくる」と言って彬が立ち上がり、「頑張って!」と返したそのとき、地が揺れた――地震?


 ふいに夢が蘇る。

 ――戻って来ないと、火が暴れ出す。

 火が? ――マグマ? 暴れ出すって、もしかして。

蘇芳すおう? どうしたの?」

「――なんでもない。試合、頑張ってね!」


 最近、小さいけれど、地震が多い。

 微かな不安が、胸の中に芽生えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る