第七話 蘇芳②
緑の髪の女もいた。
何、この儚げでたおやかな女の子。ふわふわだ。
美しい若葉色の瞳があたしをじっと見つめる。うわー、超かわいい。
あたしはなんとなく、紅い髪を撫でて整えた。
あたしの髪はうねっていて、すぐに広がってしまうのだ。
「
柊護があたしに気がついて、言う。
「柊護、久しぶり」
「うん、久しぶり。蘇芳にも紹介しようと思って。彼女が
樹里、と呼ばれた女は微笑んで頭を下げた。
あたしもつられて頭を下げる。
「樹里、あちらが
柊護の緑青を見る目を見ていたら、なんだかむかむかしてきた。
「あ、じゃあ、そういうことで」
あたしは回れ右して部屋を出ようと思ったら――何かがぶつかってきた。
「じゅり!」
と言って、その物体はあたしにぶつかって謝りもせずに、
あー。
また苦手なやつもいた。
「あさぎ」
と
そう、
あたしはこいつが嫌い。
ずっと柊護のそばにいて。
どう見ても、
浅黄は
あたしの柊護に対する気持ちが恋なのかどうかなんて、分からない。
ただ、この退屈で退屈で、しかも劣等感を刺激されるこの世界で、柊護だけが唯一安心出来る人間だった。柊護は同じ土地守りだったし(柊護は
でも、柊護がずっと、あたしじゃない誰かを思っているのは知っていた。
今日よく分かったよ。
あー、もう、目の前でいちゃつくの止めてくれないかなってくらい、二人はぴったり寄り添っている。
柊護が何か囁き、
浅黄はまるで二人の子どもみたいに
おかげで、ごはんの味が全然分からなかった。
「それで、柊護、今日は
「うん、そうだよ。全部の土地守りを回ろうと思っている」
「ふーん」
「
「……うん、……樹里」
あたしは樹里を見た。樹里はあたしを見て、にこっと笑った。あーあ、これは完敗だ。完敗って、別に勝負していたわけじゃないんだけどさ。
「それで、これでようやく土地守りが五人、全部揃ったから」
「あー、うん」
まあ、あたしは出来損ないだけどね。
樹里は笑顔であたしを見る。あたしも頑張って笑顔で返す。
「あたし、部屋に戻る」
「え?」
と言ったのは、柊護とそれから控えていた朱里だ。
「蘇芳さま」
あたしは、「蘇芳?」と言った柊護と怪訝な顔をしている樹里と、なぜだかにやついている浅黄をその場に置き去りにして、部屋に駆け足で戻った。
「蘇芳さま!」
朱里の声が背中に届く。
朱里は今度は追いかけてこない。だって、柊護や樹里、浅黄の相手をしなくちゃいけないもんね。
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