番外編 ―――――――

第三十四話 柾の想い①


 僕は樹里ちゃんが向こうに連れて行かれないで、心底ほっとした。

 実際、樹里ちゃんそのものが消えてしまう可能性はかなり高かった。樹里ちゃんの「緑青の土地守り」としての部分は向こうに行ってしまったけれど、僕はそれでも、僕の樹里ちゃんはここにいるからこれでよかったのだと思っている。青栁本家の人間にはいろいろ言われるだろうけど、問題ない。これでよかったんだ。魂が分かたれて、今後どんな影響があるかは分からない。だけど、以前みたいに夢に支配されることは恐らくもうないだろうし、夢を通じて向こうに樹里ちゃんの精気が流れ出ることもない。ともかく、樹里ちゃんはここにいる。ほんとうによかった。

 僕は眠っている樹里ちゃんの顔を見ながら、初めて出会った高校生のころのことを思い出していた。


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