五色の土地守り

西しまこ

緑青の土地守りの章

第一節 土地守りの魂 ―――――――

第一話 夢ゆめ①

 たぶん、これは夢だと思う。


 真っ白なところにわたしはいた。

 そして、何もないはずのそこに、確かにを感じていた。


 ――声が降って来る。


「お前をあるべき場所へ戻す――土地守りとして」

 ……何のこと? 土地守り? 意味がよく分からない。


「目が覚めたら、お前は本来守護すべき地にいる」

「……ちょ、ちょっと、待ってください!」

 圧倒的な何かの前に身動きがとれずにいたが、何とか声を出す。


「何だ?」

「わたし、今いるところがあるべき場所だと思うんです」

「それが間違いだったのだ」

「間違いって言われても……困ります。結婚して子どももいるし。いろいろな人間関係があるし。今の生活に満足しているんです、とても」


「……」

「間違いだったって、……わたしは悪くないので……このままでいさせてください」

 しばらく考え込むような気配がした後、また声が聞こえた。


「お前は、運がいい人生ではないか? ここぞというところで、必ずいい方向に動いた」

 ……それはそうかもしれない。でも。

「また恐らく天候にも恵まれている。旅行のとき、雨で困ったことはないであろう」

 ……それもそうかも。みんなに「晴れ女」と言われている。でも、だけど。

「加えて、よく夢を見たりはしないか?」

 それはそうだ。わたしはよく夢を見る。


 声がわたしの返答を待っているように感じたので、口を開く。

「確かに運がいいし、晴れ女だし、よく夢も見ます。でも、それが何なんでしょう?」

「それらは全て、土地守りとしての力なのだ」

「え?」

 思わず声が出てしまう。


「お前はそもそも、ある土地を守るべき存在であったのだ。それなのに、魂が迷い込み、この世界に只人として生まれてしまったのだ」

「……」

「土地守りの力が魂に刻まれている。その力は、発動はしていないものの、何分強い力だから、漏れ出て影響を及ぼしていたんだ」

「……影響……」

 運がいいということが?


「だから、もとの場所に……」

「……あの!」

 また「もとに戻す」と言われそうだったので、遮る。

「あの……では、いまいる『わたし』はどうなるんですか?」

「……」

「『わたし』は、死ぬっていうことですか?」

「……死ぬ、とは違うのだが」


「それに、わたしはもうアラフォーだから、もっと若い方にお願いします」

「……それはできぬ。土地守りは特別な存在で、替えの利かない存在なのだ」

「では、せめて、もう少し、待ってもらえませんか? ――せめて息子たちが成人するまで」

 また、何やら考える気配がした。


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