第二十八話 現うつつ②
「落ち着いた、樹里ちゃん」
「うん」
「そうそう。彬も湊も塾に行ってるから」
「うん、ありがと」
わたしは柾くんが淹れてくれた紅茶を一口飲んだ。おいしい、アールグレイ。
「……向こうで何があったの?」
柾くんの言葉に、また涙が溢れる。
「柾くん、わたしわたし……!」
「落ち着いて、樹里ちゃん」
「わたしね、浮気しちゃったの!」
「へ?」
柾くんは思わぬこと聞いた、という顔をした。
「ごめんなさい」
また涙がこぼれた。
「うーん。それは夢の中の……向こうの世界での、向こうの樹里ちゃんの話なんだよね?」
「……うん。わたし、彬くらいの年になってた」
「うんうん」
「……わたし、柾くん以外の人とキスをした」
「うーん」
柾くんは複雑な顔をして、それからわたしにキスをした。
「はい、これでおしまい」
「柾くん?」
「……まあね、樹里ちゃんの場合、ちょっと変則なんだよね、いろいろと。僕たちもよく分からないことの方が多いけれど、たぶん、向こうの樹里ちゃんと、いまここにいる樹里ちゃんは別人格だって思った方がいいんだと思う」
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