第十八話 蘇芳②

 学校に着いたら、同じような子たちがいっぱいでびっくりした。

 こんなにいっぱい人がいるなんて! しかも同じ年くらいの。おもしろーい!

 狭い部屋にぎゅうぎゅうに人がいるのもおもしろい。


 あたしは先生に紹介されて、あきらの隣の席に座る。

 授業はただ聞いていればいいということだったので、おとなしく聞く。おもしろいなと思う授業と眠い授業があって、眠くて寝ていたら彬に起こされた。


 待ちに待ったお昼ごはん!

 樹里じゅりが「彬と食べてね」ってお弁当作ってくれたの!

 ところが、彬がどこかに行こうとするので引き留めた。

「樹里が、彬とごはん食べてねって言ってた」

 なんかぐずぐず言っていたけれど、結局並んで食べることになった。よかった。

 彬がスマホを取り出すから、取り上げた。だってあたし、おしゃべりして食べるんだもん。

「お母さんって、みんな樹里みたいなの?」と聞いたら、「人によるんじゃない?」と彬は言った。彬は樹里のこと話すとき、すごく顔が優しくなる。彬も樹里のこと、好きなんだね。あたしも好き。


 彬と食べていたら、邪魔が入った。

 あ。

 今朝、駅で見かけた子だ。走って行っちゃった子。

 なんで自分で話さないのかなあ。友だちに話させて。お付きの人なのかな?

 あ、自分で話し出した。

 彬がその女の子のこと「好きだよ」って言ったのに「嘘つき」って言って行っちゃった。

 あーあ。なんだかよくないね。でもさ、こういうのってそばで見ているのって、結構おもしろいんだね。いつもあたしは、あたしが争いごとの当事者だった気がする。 

 そばで見ている方が分かることも多いんだって分かった。


「別れちゃったし」と彬が溜め息ついていうから、あたし、教えてあげたの。「でも、彬、あの子のこと、好きじゃないじゃない」って。「樹里のことのが、好きだよね?」って。

 だって、樹里を見る目と全然違うもん。



 帰り道、嫌なものを見つけた。弱いものいじめ。

 あたし、弱いものいじめ、好きじゃない。

 つい、かっとして、炎を飛ばしちゃって――あ、まずいって思ったの。

 人を燃やしちゃう! あの人、ひどい怪我しちゃう!

 すると彬が消してくれた。炎を。

 しかも、小石を使っていじめてるやつを撃退した。

 彬、かっこいい!


「彬、やるね!」

 あたしは嬉しくなった。

「気分悪いだろ、ああいうの」

「あたしも弱いものいじめ、好きじゃない。護らなくちゃって思っているんだ」

「でも、燃やすのはまずいよ」

「止めてくれて、ありがとう」

 あたしはにっこり笑った。こんなふうに笑うの、久しぶりかも。

 やっぱり、彬、優しいね。樹里や柾と同じ。優しくてあったかい。それからね、かっこいいね。



 あたしは家までの帰り道、彬といろいろおしゃべりしながら帰ることが出来た。

 彬は溜め息をつかなかったし、あたしも、たぶん、ちょっと優しくなれたんじゃないかな、と思う。

 友だちって、よく分からないけれど、こんな感じなのかな?

 よく分からないんだけどさ、さみしくなくなるんだね。

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