第31章 いざ城下町へ! 前編

第149話 僕のお米が、ついに全国展開へ!?

「――さて、いつまでも拘束するのも悪いし、早速本題に入ろうか。実は今、地方にある国が管理している土地の一部を開拓して、田んぼを作っているところなんだ。完成すれば、そこでもフェリク君のお米を収穫できるようになる」


 ガストラル王国内には、王城があるこの王都以外にも、国が保有している広大な土地が広がっている。

 しかしその多くは手つかずの状態で放置されており、かねてよりそうした場所を有効活用したいと考えていたらしい。


 ――僕のお米が、ついに全国展開されるんだ。


 愛しいお米が全国各地に根付いていくのを想像し、僕は胸が高鳴るのを感じた。

 僕のお米なら、環境に左右されることなく育ってくれるはずだし。

 きっとこれから、どんどんお米を主食とした文化が生まれていくんだろうな。

 そしたらいつか、僕が食べたことのないお米料理も……ふふ。ふふふ。


「……フェリク君? どうかしたのか?」

「――はっ! も、申し訳ありません! ええと……」


 ふと我に返ると、国王様は少し心配そうな顔で、領主様とアリア父は呆れたような顔で僕を見ていた。危ない危ない。

 ここは王城なんだから、ちゃんとしないと!


「――それで、お米のプロである君に田んぼの様子を見てほしいんだ。今この国で、お米に関して君に勝る者はいないだろうからね」

「田んぼですか。――それでしたら、私の実父の方が適任かもしれません。私は田んぼの管理にはそこまで詳しくなくて……。実父であるレグス・クライスなら、代々米農家の家系で長年田んぼを見ていますので、お力になれる部分もあるかと存じます」


 僕はスキル【品種改良・米】でお米の改良をしてはいるけど、農業経験が豊富なわけじゃないからね。

 そこに関しては、圧倒的に父さんの方が知識も経験も勝っているはず。


「本当か。それなら、次の貴族会議のタイミングででもぜひ会ってみたいものだ。リアム、どうかな?」

「……それはもちろん、私としては光栄なことです。しかし彼の実父はいたって普通の平民でして、なんというかその……今は忙しく時間もあまり取れませんので、陛下に失礼がないとも限りません。そこをご承知いただけるのでしたら」


 ――たしかに父さんは、割とガサツなところがあるからな。

 それに王族との接し方なんて当然知らないだろうし、緊張ゆえに変なことを口走らないとも限らない。

 巻き込んで万が一のことがあったら――。

 そう思ったが、国王様は「そんなことか」と笑った。


「力を貸してもらうのはこちらなのだ。フェリク君やフローレス君と同様に、客人として丁重に扱うと約束しよう」

「――承知いたしました。それでは次回、レグスも連れてまいります」

「うむ。では田んぼのことはそのレグス君に任せるとして、フェリク君にはお米の扱い方や調理方法などを伝授してもらおう。カユーのイメージを払拭したい」

「かしこまりました。お力になれるよう尽力いたします」


 でも父さん、突然王城に呼ばれるなんてびっくりするだろうな。

 かしこまった場が苦手な人だし、意外とそういう部分は繊細なんだよね。

 ファルムにいたころにおじさんが開催してくれたおにぎり試食会ですら、「俺は畑の世話をする方が性に合ってる」とかなんとか言って参加しなかったし!


 ――まあでも、父さんも今はクライス農場の社長なわけだし、あの頃とは違うか。

 ここはお米のために頑張ってもらおう。うん。

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