第27話 白米メニューの試食会

「――こちらが考案したメニューです」

「こ、これは……?」


 グラムスで屋台巡りをしてから1ヶ月後。

 僕は屋台で出すためのメニューを研究し、どうにか形にすることに成功した。


 領主様に提案したメニューは、大きくわけて3つ。「おにぎり&焼きおにぎり」「おこげサンド」、そして「甘酒」だ。


「……このおにぎりに添えてある野菜は、おいしいけれど不思議な味がするね? 食べたことのない味だ」

「米ぬかに漬けて作った『ぬか漬け』という漬物です」

「米ぬかというのは、たしか米の表面の茶色い部分だったな。本来捨てられる部分で漬物ができるのか」


 領主様は、初めて食べるぬか漬けに驚きを隠せない様子だ。

 まあ僕にとっては、米ぬかをそのまま捨てる発想なんてないけどな!

 米ぬかまで無駄なく活用してこそ、本気の米loverだ。

 ちなみにおにぎりは、言うまでもなく好評だった。


「この板状の米は、カリッともっちり香ばしくてたまらんな。酒がほしくなるよ。味もしっかりしていてかなり私好みだ。中に挟まっているのは、これは塩漬けの豚肉を焼いたもの、それとレタスかな?」

「はい。サンドイッチをイメージしてつくってみました」

「素晴らしい。米自体にも味がついているし、食べごたえもある。私はおこげサンドの方が好きかもしれないな。スティック状になっているのも、食べやすくて労働者に好まれそうだ」


 よし! やった!!!

 屋台では、おいしさに加えて「食べやすさ」と「ボリューム」も重要視されると考えて、見た目の派手さよりも実用性を重視することにしたのだ。


「……最後の液状のメニューだが、これはカユーとは違うのかい?」

「違うものですよ。甘くておいしいので飲んでみてください。ドリンクですので、カップからそのまま」

「……うむ、たしかに甘い香りがするね。ではいただくとしよう」


 領主様は、ドロドロになったカユー状の米に若干抵抗を感じたようだったが。

 それでも静かに口をつけてくれた。


「あ、甘い……! なるほど、白米を砂糖で似たということか」

「いえ、実はこれ、砂糖は一切使ってません。米麹という、体に良い菌で発酵させてるんです」

「き、菌だって!?」


 この世界でも、実は発酵食品は多数存在するのだが。

 しかしそれが「菌」によって行われている「発酵」であることにはたどり着いていない。

 そのため、基本的には「菌=害悪」だと思われている。


「菌を食べて病気にならないのかい? こんなことを言ってはなんだが、平民の君が貴族の私を危険に晒すようなことがあれば、君は――」

「大丈夫ですよ。うちの母は、植物由来のものを鑑定できるスキルを持ってます。その母が、甘酒を鑑定して無害だと言ってくれました」

「そ、そうか。スキル持ちがそう言うなら、まあ安心ではあるのかもしれないな。しかし不思議なこともあるものだ……」


 領主様は、訝しげな顔をしつつも気に入ったようで、結局は甘酒を飲み干した。

 これはいけるのでは!?

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