第137話 いよいよおせんべいの誕生だああああ!【レシピあり】
「次はこのお米の粉――米粉でおせんべいを作るよ。まずはこれに水を加えてこねて、茹でる!」
僕一人ではできる量に限界があるため、これもみんなで分担することになった。
工房にある大きめのボウルをすべて出し、みんなでこねて、それを大きな鍋にたっぷりのお湯を沸かして茹でていく。
「わあ、なんだかお餅みたいですね?」
茹でたものを見て、シャロは「可愛い」とかなんとか言いながらツンツンつついている。ミアも興味津々だ。
お米を可愛がるなんて、やっぱりこいつら米好きの才能があるな。うん。
「これをしっかりこねて、あとはこうやって小分けにして伸ばして――。あ、形は多少いびつでも問題ないから大丈夫だよ!」
小分けにした塊をみんなで平らなおせんべい状に伸ばし、くっつかないよう板の上に並べていく。
「で、できたああああああ! あとはこれを二、三日かけて乾燥させて、焼いて、醤油を塗ってさらに焼けば完成だよ」
たまにハートや星の形も混ざっているのは、シャロの仕業だろうか?
女の子だなあ。
でも、こういうのもなんかいいな。
「二、三日!? 今日食べられるんじゃないんですね?」
「茹でたのに乾燥させるなんて不思議です」
「今日食べられると思ったのに、おあずけかあ。先は長いねー」
シャロもミアも、それから工房のみんなも完成間近だと思っていたようで、乾燥前のおせんべいに切ない眼差しを向ける。
そういや言ってなかったな。ごめん!
「手間と時間はかかるけど、食べたら絶対作ってよかったって思うから」
――なんて言ってるけど。
僕だってできることなら今すぐ食べたい!!!
◆◆◆
こうして迎えた二日後。
天気がよかったためか空気が乾燥していたのか、おせんべいは水分が抜けてちょうどいい仕上がりになっていた。
「固くなってるますね! これがおせんべい!」
「すげえな。こいつは見たことない類の菓子だ。粉から作るっつーからクッキーやビスケットみたいなもんを想像してたが、全然違うんだな」
「たしかこっから、醤油を塗るんじゃなかったっけ?」
シャロとミアを含む工房のみんなは、乾燥したおせんべいを手にして太陽にかざし、目を輝かせる。
うんうん、分かるよ。こういうの、感動するよね!
僕も、これだけの量を一度に作るのはさすがに初めてだよ。圧巻だな!
米原秋人だったときも二、三十枚なら作ったことがあったが、今回は百枚以上作ったため、ビジュアル的にもかなりインパクトがある。
「あとは焼く作業だけだから、もう少しで完成だよ!」
天日干ししていたおせんべいを回収し、フライパンでこんがり焼き色をつけていく。途中で醤油を塗って、焦がさないよう気をつけながらさらに香ばしく焼き上げるのがポイントだ。この辺は好みだけど。
米と醤油の焼ける香ばしい香りが合わさり、周囲に食欲をそそってくる反則級の匂いが充満し始めた。
みんな「これはやばい」「もう待ちきれねえ」「ほわあああ!」など思い思いの言葉を口にしながら、おせんべいが焼き上がるのを待っている。
「――よし、こんなもんかな! 熱いから火傷しないように気をつけてね」
お皿に取って火傷しないよう紙で挟んでみんなに手渡すと、受け取った傍から出来立てのおせんべいにかぶりついた。
ガリッ! バリッボリッ!
これこれ。この砕かれる音。これも込みでたまらないんだよな。
「――う、うまい! なんだこれ!?」
「――うん、味もいいけど、この固さがたまらないな。クセになりそうだ」
「んんーっ! これは絶対流行りますよ! 私もぜひとも休憩中のおやつとして常備したいです!」
「同感です」
全員に配り終えたのを確認して、僕も早速自分のおせんべいにかじりついた。
「ああー、これだよこれ! 幸せすぎる!」
おいしすぎて涙が出てきた……
きっと今、僕たちは世界一幸せだな!
「手間はかかるけど、精米済みのお米を使えばスキルが必要な場面もないし、商品化もしやすいんじゃないかな。明日おじさんと打ち合わせする予定があるから、そのときに話してみよう」
精米機もちょうど完成したところだし。なんなら玄米で作ってもおいしいし!
屋敷のお披露目会でお土産にしたら喜ぶかなあ?
さっと食べられるから、兵士たちの携帯食としても喜ばれそう!
ふふ、夢が広がるぞ!
*****
☆のちほどこちらに、写真つきのレシピが上がります(近況ノートのURLが貼られます)ので、しばしお待ちくださいませ……!
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