第21章 王族からの依頼

第99話 半月以上ぶりのアリスティア家

 みんなで五平餅を堪能して、集落の住民たちと情報交換をして、カントルを離れることになった。

 とは言っても、うちの両親は旧ファルム、現クライス農場で暮らしているわけで、比較的カントルとの距離も近い。

 そのため、今後も積極的に行き来して交流を深めようという話になった。


 帰りの馬車では、疲れたアリアはぐっすりと眠っていた。

 9歳の子どもにしてはまあまあ頑張ったほうだろう。


 僕は窓の外を眺めながら、今後のことについて考えていた。

 今回の長旅で、米農家の多い村や集落の取り込みはほぼ終了したし、それ以外の希望者も既にクライス農場へと移住させている。

 今では、新規で米農家になりたいという領民もあとを絶たない。


「――好きなものがこうして評価されるって、素晴らしいことだよな。領主様やおじさんにも、助けてもらった分の恩返しくらいはできたかな」


 しかしさすがに全領民が米農家になってもそれはそれで困るため、現状は規制をかけて、別方面でのお米に関するビジネスを依頼することにしている。

 飲食店やお米を使った商品の製造・販売、それから醤油や味噌の販売など。

 今や白米だけでなく、米ぬかも積極的に活用されて大人気だ。

 漬け物を漬けるだけでなく、お菓子にしたり、掃除やスキンケア用品にしたりと、多方面で大活躍している。

 今では米ぬかも、捨てるような余剰在庫はまったくない。


 また、品種改良したお米と正しいお粥の作り方を広めたことで、これまで不評を極めていたカユーも、新たに「玄米粥」として認められつつある。

 まあ玄米粥にクセがあるのは変わらないため、それを豊かな味わいと取るか否かは分かれるところだが。


 ――品種改良でクセをなくすこともできそうだけど、玄米は玄米でうまいし、それはしたくないんだよな。


 このクセが失われるのは、やっぱり残念な気がする。

 それに、みんながみんな玄米を食べ始めたら、米ぬかが取れなくなるし。


 藁も納豆作りや家畜のえさに使えて無駄が出ないし、もみ殻すら堆肥になる。

 存在すべてが天からの贈り物だよな本当……。

 まあ納豆は、今のところほとんどが自分用なんだけど!

 領主様やアリア父にも食べてもらったが、苦手だったようで二度目は拒否された。

 ちなみにシャロだけは、「あはは、すごい匂いですよね。クセになりますっ」と笑いながら食べてくれる。匂いフェチなのだろうか? 知らんけど。


 ◆◆◆


「おお、おかえりフェリク君。旅はどうだったかな?」

「り、領主様!? わざわざお出迎えなんてそんな……」

「はっはっは。子どもが余計なことを気にするものじゃないよ。で、どうだった?」


 どうやら、僕の長旅への感想が気になるらしい。


「え、えっと……とても勉強になりました。あと、梅を発見して……」

「うめ? うめとは何だい?」

「酸味が強い、ごはんにぴったりの果実です。完成したら、領主様もぜひご試食ください。おいしいですよ」

「酸味が強くてごはんに合う……ふむ、興味深いね」


 領主様はイマイチ想像できない様子で、どうにか既存の何かとイメージを結びつけようとしている様子だ。無理そうだけど。


「まあ、あとでじっくり話を聞かせてくれ。こちらも話したいことがたくさんあってね。帰りを待ちわびていたところだ」

「は、はあ……」


 ……話って何だろう?

 トラブルとかお叱りじゃありませんように!!!

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