第123話 国王様からのお願い
「――それで、話というのは」
「おお、そうだった。今年、このガストラル王国内で不作が続いて、食料が不足気味なのは知っているね?」
「ええ。特に王都近辺は台風や大雨などの被害も甚大だったと」
国王様と領主様は、どこそこ領がどうだとか、税収がどうだとか、貴族同士のあれこれとか、何やら難しい話をし始めた。
――すげえ。
領主様、やっぱり領主様なんだな。
そんな当たり前のことを考えながら話半分に聞いていると、いつの間にか話題がお米へと移っていた。
「――そこでだ。今後のことを考えて、国でフェリクの米を積極的に栽培したい。フェリク、協力の意思はあるかな?」
「私は国王様とりょ――父であるアリスティア辺境伯のご意思に従います」
「うむ。ならばここからは場所を変えて話をしよう」
◇◇◇
僕と領主様は、近くに控えていた執事によって別室へと案内された。
部屋は談話室のような、くつろげるソファとテーブルが置かれた豪華な部屋で。
大きな窓からは美しい庭園が一望でき、空からは昼の光が降り注いでいる。
部屋に入ると、メイドさんが紅茶と焼き菓子を持ってきてくれた。
「……緊張するかい?」
僕が黙り込んでいたせいか、領主様がそう優しく気遣ってくれる。
「そ、そりゃまあ。僕みたいなのがこんな場所に来るなんて、場違いもいいところですからね」
「君が今ここにいるのは、間違いなく君の力だ。もっと自信を持ちなさい」
領主様にぽんっと肩を叩かれ、来てしまったものは仕方がないと覚悟を決める。
しばらくすると、そこに国王様が現れた。
部屋にメイドの姿はなく、領主様と僕、国王様、それから壁際に執事が1人控えているだけだ。
「さて、それでは話をしよう。2人とも、ここでは気楽にするといい」
国王様は、先程よりもラフな服装に着替えていた。
無駄な威圧感を与えないよう配慮してくれているのかもしれない。
「しかしまさか、君がこんな短期間でフェリク君との養子縁組を済ませるとはね。やはり侮れないな」
「いえいえそんな、何の話でしょう?」
領主様は、先程と変わらず真意の見えない腹黒笑顔で対応している。
「いくら私といえど、アリスティア辺境伯家の子息を好き勝手することはできないからね。まったく」
「彼はうちの大事な稼ぎ頭ですから。陛下であっても、そう好きにはさせませんよ」
どうやら領主様と国王様は、これだけの話をできるくらいには近しい関係性らしい。
そういえばこの世界では、辺境伯って公爵と同等かそれに続く上級貴族なんだっけか?
「君が大事にしている相手に好き勝手しようなんて思わないさ。あとが怖いからね」
国王様はそう諦めたような笑みを浮かべ、ため息をつく。
うちの領主様は、どうやら思った以上に力があるらしい。
「私は、2人と対等に話をしたいと思っている。力を貸してもらう以上、君たちが望む相応の対価や待遇も約束しよう。だからどうか、私に、国の食糧問題に、前向きに協力してほしい」
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