第122話 国王様との再会
「――それではアリスティア辺境伯様、フェリク様、こちらへ」
怒涛の一週間が過ぎ、いよいよ王城へと向かう日がやってきた。
スキル【転移】持ちの使者たちに案内され、馬車へと乗り込む。
転移が使えるなら馬車はいらないのでは?と思ってしまうが、恐らく形式的なことなのだろう。多分。知らんけど。
「フェリク、気をつけてねっ!」
「うん。工房のこと、頼んだよ。シャロもミアも、よろしくね」
「承知いたしました」
「お任せくださいっ」
「――では、王城へと参ります」
スキル持ちの従者3名が、馬車を囲んでスキル【転移】を同時発動させる。
こうすることで、より強大なスキルを安定した形で発動できるらしい。
アリアは、自身と同じスキルを持つ使者の様子をじっと見つめていた――。
◇◇◇
転移でたどり着いたのは、王城へと続く石畳の道少し手前だった。
「ここからは馬車で参ります。警備の都合上、ここから先はスキル【転移】の使用が禁じられておりまして……申し訳ありません」
「ああ、分かっている」
――な、なるほど。それで馬車なのか。
美しく舗装された一本道を、王城へ向かって進んでいく。
王城は、西洋のお城によくある、某ねずみの国で有名な城のような形をしていた。
近づくと、目の前に聳えるその圧倒的な迫力に息が止まりそうになる。
ここがガストラル王国の王城――。
領主様のお屋敷も大きいと思ってたけど、感じる威圧感が全然違うな。
「――到着いたしました。足元にお気をつけくださいませ」
「あ、ありがとうございます……」
馬車から降りると、待機していた多くの執事や衛兵、使用人たちが頭を下げる。
「ようこそいらっしゃいました。国王陛下がお待ちかねです。荷物は使用人に任せて、どうぞこちらへ」
領主様とともに案内されたのは、赤いじゅうたんが敷かれた先に玉座がある、いわゆる「玉座の間」的なところだった。
玉座には、先日会ったあの国王様が座っている。
「アリスティア辺境伯、それからフェリク、よく来てくれた」
「お久しぶりでございます、陛下」
玉座の前で膝をつく領主様に続き、僕も同じように膝をつき、頭を下げる。
「――2人とも顔を上げてくれ。リアム、君の功績は聞いているよ。領民からの支持も厚く、領内――特にグラムス周辺は活気にあふれているそうだね」
「恐れ入ります」
「難航していた地方の農村改革も、ここ最近は順調だとか」
「はい。この子のスキルのおかげで、お米の需要が飛躍的に伸びておりまして」
実際、僕がスキルを授かってからの約2年で、領民(特に貧しかった米農家や農民)の生活は向上し、アリスティア領の収益はうなぎ登りに上昇している。
……というのを、この一週間でグラフやら何やらを見せられては叩き込まれた。
――2年、か。
来月には、僕もアリアも10歳になるんだよな。
そしたらアリアも、本格的にスキルの修行が始まって――。
「そういえば、フェリクを君の家の養子として迎えたと聞いたが」
「はい。この子の家は、元々は領内の小さな村にある米農家です。今後のことを考えますと、このままではいろいろと大変かと思いまして」
「――ふむ、なるほど、確かに辺境伯家の後ろ盾があれば、そう簡単には手出しできまい。さすがだな。……当然、理由はそれだけではないのだろうが」
領主様と国王様は、笑顔のまま意味ありげに、何も言わずに見つめ合っている。
なんだこの空気! 怖い!!
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