第47話 スキル【炊飯器】を手に入れた!
「こんにちはー!」
「――え、えっと、どちら様でしょうか」
「ええ、ひどいですっ! 私です私。スキルを授けた女神ですよ~」
眠りに落ちたと思ったら、僕は真っ白な空間に立っていた。
目の前には、真っ白なワンピースと膝下まで伸びた美しい金髪が印象的な、「THE☆女神」という感じの女性が立っている。
ほんわかした印象の女神様は、ぷくっと頬を膨らませてこちらを見る。
――あ、ああ、あのスキルをくれる女神か。
なんかこの女神と話す度に、僕の中の神様像が崩れていく……。
「も、申し訳ありません。お姿を拝見したのは初めてだったので」
「もうっ! まあいいでしょう。それより――おめでとうございます!」
「は? えっ?」
女神はどこから出したのか、パーン!とクラッカーを鳴らし、盛大に紙吹雪をまき散らす。
そしてまるで何かの抽選に当たったかのように、突然そう祝いの言葉を述べた。
「功績ポイントがMAXになったので、あなたには第3のスキルが付与されます」
「だ、第3のスキル……!?」
そういえばアリア父が、領主様はスキルを3つ持っていると言っていた。
というか功績ポイントって何だろう?
一般的には、8歳で授けられるスキル1つで終了、というのが常識だが、実はそういうわけじゃないってことなのか?
「……反応が薄いですね? もっと喜んでくださいよ~。これ、けっこうすごいことなんですよ!?」
「ええ、いや嬉しいです! 嬉しいんですけど、ただちょっとびっくりしちゃって」
「ああ、そういう。ふふ、まあ8歳で3つめのスキルを獲得できるなんて、恐らく史上最年少ですからね~」
僕が驚いていると把握したことで、女神は満足げにうんうんと頷く。
「女神様が前世の記憶を取り戻させてくれたおかげですよ」
「え? 私そんなことしてないですよ? あなたが記憶を取り戻したのはたまたまです。米原秋人さんの魂、よほど食べ損ねた新米への念が残ってたんでしょうね~」
「え……」
な、なん……だと……。
もし、前世の記憶がなかったら、あのまま米嫌いの状態で【品種改良・米】やら【精米】やらと向き合う羽目になっていたら……。
そう考えるとゾッとする。
「それにしても、まさか【品種改良・米】で、しかも1年足らずでここまで上り詰めるとは。でも、うん。あなたならきっと何かしてくれるって思ってましたよ☆」
「は、はあ」
「それで、肝心のスキルなんですけどね。【炊飯器】どうでしょう?」
「炊飯器」
いや、炊飯器は欲しいと思ってたけども。
でもスキル【炊飯器】ってなんだ。
「えーっと。例えばほら、こんな感じに、いい感じの箱と蓋があったとします。あ、中にはお米と水が入ってます」
女神が手を前へかざすと、そこにテーブルが出現した。
その上には鍋くらいの、蓋付きの木箱が置かれており、女神が蓋を開けて中身の確認を要求してくる。
――うん、米と水だな。
「この箱に、炊きたてごはんをイメージしながら『スキル【炊飯器】』と唱えてください」
「……す、スキル【炊飯器】」
「すると!? どうでしょう! なんと木箱の中にはあっ……炊き立てごはんがっ!」
女神が木箱の蓋を開けると、中では炊き立てつやつやごはんが湯気を立てていた。
粒の1つ1つがしっかりと立ち、キラキラと輝きを放っている。
――え、つ、つまりこれは、今この一瞬でこの木箱が炊飯器になって、しかも炊飯してくれたってことか?
「す、すげええええええええ!!!」
「ふふ、でしょう? しかもこれ、なんと炊いたごはんが入っている間は保温機能も付与されます☆」
「な、なんだと……。こんなのまさに神の箱じゃねえか……」
「もちろん鍋でもカップでも箪笥でも、蓋ができる容器があれば何でもいけますよ。ただ、水漏れが防げるわけじゃないので、布や紙の容器では無理ですけど」
これは研究が一気に進むぞ!
しかも食べたいときに、いつでも一瞬で炊き立てごはんが食べられる。
さ、最高か……。
「ありがとうございます! 最高です!」
「ふふ、いえいえ。こちらとしても、世界の発展に貢献してもらえるのは助かりますから。これからも頑張ってお米を普及させてください。それでは私はこの辺で。素敵な生をお過ごしくださいね☆」
女神のその言葉で、僕の意識はスッと更なる深みへ落ちていった。
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