第34話 ついにもち米を誕生させたぞ!
僕は醤油&味噌、それから日本酒づくりを進めつつ、スキル【品種改良・米】でもち米を作ることにした。
これがあればみりんも生成できる。はず。
それにやっぱり、せっかくこのスキルを得たなら餅も食べたい。
つきたての餅のうまさは筆舌に尽くしがたく、僕は正月に限らず年に数回は餅つき機で餅を作っていた。
そして周囲に配っては「なぜ今」みたいな顔をされたものだ。懐かしい。
前世では、餅っていうと「年末年始に食べるもの」という認識が強く。
毎年時期になると「余った餅の使い方5選」「餅の消費に困ったらコレ!」など、餅に謝れと言いたくなるWEB記事が多数生産されていた。
――餅が余るなんて、そもそもそんな状況発生しないし!
焼いても揚げても茹でてもおいしい、あんな優秀な作り置き滅多にないんだぞ!
ああ、お雑煮食いたい……。
おこわや中華ちまき、おはぎ、お赤飯もいいな。
「あの、フェリク様……?」
「あ、ああごめん何でもないんだ」
危ない危ない。
うっかり前世の至福に思いを馳せすぎて、現実が疎かになるところだった。
――ええと、まずは米を餅米にしなきゃな!
僕は倉庫から数袋分のお米を引っ張り出し、もち米をイメージしながらスキル【品種改良・米】を発動させる。
いつもどおり光を放ち、米粒が見慣れた形から丸みを帯びた形状へと変化していく。
滑らかさを感じさせる乳白色になればもち米の完成だ。
「――よし、もち米の完成!」
「なんだか白く濁ってしまいましたが、大丈夫ですか? 以前、おいしいお米は透き通っているとフェリク様が……」
「もち米は別なんだ。でんぷんの成分構成が違うらしいよ」
まあ、さすがに僕もそこまで細かいことは分からないけど。
普通の米にはアミノペクチンに加えてアミロースという成分が含まれているのに対し、餅米はアミノペクチン100%で。
それがこの見た目と食感の差に繋がっているらしい、というのを生前見た気がする。
「フェリク様のスキルには、不思議な知識がたくさん詰まっていますね」
「あ、あはは。いやあ、何だろうね? なんか勝手に浮かんでくるんだよ」
ぽかんとした様子で見つめるシャロを適当にごまかして。
早速もち米を炊いてみることにした。
もち米を洗い、15分~30分ほど吸水させたら鍋にもち米、それから普通の米の時よりやや少ないくらいの水を入れて火にかける。
強火で沸騰させて、それから弱火でじっくりが基本だ。
あとは蒸らせば――
「できたああああああああ!」
「わわ、いつもどおりいい香りですね~!」
「だろ? でもいつもとは違うんだ。はいこれ、食べてみて」
木べら(そういえば、しゃもじがほしいな!)で試食用の小皿に炊き立てのもち米を取り、シャロに渡す。
そして自分も早速味見してみた。
「うまああああああ! これ、これだよ! モッチモチだな!?」
「す、すごいですっ! いつもの数倍モチモチしてますっ。私これ大好きですっ」
「このおいしさを分かってもらえて嬉しいよ。僕のメイドがシャロでよかった」
「ふえ!? そ、そんな、私こそですっ! フェリク様にお仕えさせていただけて光栄ですっ」
このまま食べてもうまいけど。
まずはやっぱり餅にしたいよな!!!
おじさんと領主様も絶対喜ぶはず。屋台メニューとしてもいいよな。
――あ。そうだ。
餅なら米粒が見えないし、レストランのメニューにも使いやすいかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます