第33話 レストランへの足掛かり
翌日から、僕は屋台に顔を出しつつ、レストランで展開するためのメニューをも考えることになった。
オーナーやシェフへの挨拶回りも兼ねて、アリア父がレストランへ連れて行ってくれることになり。
この日はほとんどそれに費やすことになった。
「雰囲気は掴めそうかい?」
「うんっ! 試食サイズとはいえ、あんな豪華な料理たくさんご馳走になってよかったのかな……」
「もちろん。これも仕事のうちだからね」
レストランの料理は、基本的にパンに合わせたメニューになっている。前の世界風の言い方をすれば洋食だ。
そこにどうごはんを入れ込むかだけど……。
リゾット……はカユーと似てるって嫌がられそうだしなあ。
お酒を好む人が多そうだし、そういう路線から攻めるのもありかもしれない。
「……あ。お酒はどうかな?」
「お、お酒? お米で?」
「うん、あとはそのお酒に合うおつまみ」
「でも、フェリク君はお酒は飲めないだろう? どうやって研究するんだい?」
「え、ええと……多分きっとどうにかなるよ。おじさんもいるし!」
たしかに作っても今は飲めない。
でも僕が大人になる頃にはいつでも手に入るようにしておきたい!
「大丈夫かな……。まあでも、おいしいお酒が作れたら大きいとは思う。やるだけやってみるか」
「やった! 楽しみにしててね!」
日本酒ができれば料理の幅も広がるし。
和食作りが捗るぞ!
「そういえば、あの屋台で出している黒い液体、あれをほしいという声が多くてね。あれ自体を売ることはできるだろうか」
「醤油のこと? できるけど、あれ作るの結構大変なんだ。売るならもっと大きな場所がほしいかな……」
「なるほど。領主様に話してみよう」
麹菌は培養してるからだいぶ増えてきたけど、どうしても発酵に最低半年は要する。
商品として出すなら、できることなら1年はほしい。
「材料は何を用意すればいい?」
「麹菌は作ってるから、大豆と小麦、塩がいるかな」
「……そ、それだけ? 醤油は黒いのに、材料は白っぽいものばかりなんだね」
「発酵させる過程で色が変わるんだよ」
「く、腐ってるわけじゃないよね?」
「腐らないように麹菌を入れるんだよ」
「不思議なものだな。菌を入れるのに、それで腐らなくなるなんて」
ワインやチーズも発酵食品だけどな!
……というのをいつ明かすか悩むところだ。
8歳の子どもが突然そんなこと言い始めたら不審に思うだろうし。
とりあえず、今は僕が考案したもの以外については黙っておこう。
領主様に場所がもらえたら、味噌とみりんも本格的に作り始めたいな。特に味噌!
これがあるかないかで、和食作りの幅が大きく変わってくるし!
試食段階で食べた味噌の焼きおにぎりも、商品化を目指したい!
米も、さらさら系ともっちり系のほかに餅米がほしいんだよな。
こっちはすぐできそうだし、余裕ができたら進めよう。
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