第43話 父から米農家(棚ぼた的な)
――考えてみます、とは言ったものの。
ない袖は振れないというか、ない米は炊けないというか。
領主様に相談を持ち掛けられてから、僕は米を増やす方法を考えてはみたが。
米ラバーとはいえ一消費者だった僕がそんな魔法のような方法を知ってるわけもなく、これといった案が浮かばないまま時間だけが過ぎていった。
「……にしてもすげえな。これがフェリクの工房だなんて、我が息子ながら夢でも見てるみたいだ」
「まさかフェリクがこんなに出世しちゃうなんてね。お母さん嬉しいわ」
今日は工房に両親を連れてきて、見学会を開催している。
元々住んでいた家の何倍だろうかというお金のかかった建築物に、両親ともただただ感動している。
「近々、家庭教師もつけてくれるらしいよ。将来のためにちゃんと勉強もした方がいいからって」
「家庭教師!? そりゃありがたい話だが、でもせっかくなら学校の方がいいんじゃねえか? まあ、何もしてやれない父さんが言えたことじゃないが」
「グラムスにある学校は貴族しか入れないんだって。それ以外ってなると、領主様のお屋敷から通えなくて寮生活になっちゃうんだ」
領主様にとって、僕は家族でも何でもない。
ただ家庭の事情と仕事の都合で屋敷に住ませてもらっているだけの、言ってしまえばよそ者だ。身分もあまりに違いすぎる。
だから僕も、「家庭教師を雇ってもらうなんて気が引ける」と話したのだが。
領主様は「必要なことだから」と言って聞き入れてくれなかった。
たぶん、学校に行かれると仕事が回らなくなるってのが大きい理由だと思うけど。
「でも、アリアも一緒に勉強できるようにしてくれるってさ。だから家庭教師って言っても1人というわけじゃないよ」
「そ、そうなのか。まあフェリクがそれでいいんなら」
家庭教師が来てくれるのは、週3日。
それ以外は自習ということになるらしいが、まあ(中身は)子どもじゃないし、前世では一応大学まで出てるし。
多分だいたいはどうにかなる。はず。
「――そうだフェリク、今度フローレスさんに、米の仕入れ量を増やせないか聞いてみてくれねえか? 家も離れちまったし、最近全然会えなくてな……」
「えっ? 増やせるの!?」
「この前、ファルムの家に何か残ってないか確認しに行ったんだ。そのとき、隣村の農家仲間に引っ越したことを話しに行ったら、米が売れなくて困っててな」
父によると、その際、「米がどんどん売れなくなって、うちももう潮時かもしれない」とうなだれていたらしい。
その村へは、僕も1~2回だけ行ったことがある。
村民の多くが米を作っている、ファルムよりも貧しい寂れた集落のような村だ。
――これはいけるかもしれない!
「分かった。ちょうど領主様に、お米をもっと確保できる方法を探してほしいって言われてたんだ。聞いてみるよ」
「本当か! それは助かるよ。貧しい村だけど、ファルムのヤツらよりずっと信頼できる良い人たちばかりだよ。ぜひ話だけでもしてみてくれ」
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