第50話 そうだ、ごはんパーティーをしよう!
「……ごはんパーティー、ですか?」
「うん。おかずをたくさん用意して、みんなでごはんを楽しみたいなって」
「……私たちメイドが一緒に参加するなんて、許されるでしょうか」
シャロとミアは、不安そうに互いに顔を見合わせる。
「大丈夫だよ。今回開くのはただのパーティーじゃないんだ。レシピ開発も兼ねてるんだよ」
「なるほど! それならたくさんいた方が、案も出やすいですね!」
「そうそう。これから準備にかかりたいから、シャロとミアはここに書かれた食材を集めてくれると助かる。それから――」
僕は2人に段取りを説明し、みんなに声をかけてまわった。
フローレス一家には、アリア父が毎日昼頃に定期連絡をくれるため、それを活用して声かけを依頼する。
――さて。
ごはんはスキル【炊飯器】のおかげで一瞬だし、おかず作りを進めるかな!
◆◆◆
夜、19時過ぎ。
アリスティア家の庭の一角に、声を掛けた面々が続々と集まり始める。
今回声をかけたのは、領主様とバトラさん、僕の両親とそのメイドさん、フローレス一家、シャロとミア、工房の従業員やメイドさんたちだ。
「これは――すごいな。この巨大な木箱の中はごはんかい?」
ずらっと並んだテーブルには、数々のおかず、そして大量のごはん(が入った箱)が所狭しと用意されている。
それぞれ好きなように好きなだけ、各自お皿に取って食べるスタイルだ。
「領主様、ようこそごはんパーティーへ。はい、実は新しいスキルを授かったので、その力の確認も兼ねてるんです。今日のパーティーは全員が参加者ですので、お食事はセルフサービスでお願いしますね」
「わ、分かった。……いや、待ちたまえ。新しいスキルだって?」
領主様「冗談だろう」という顔で僕の目を見る。
そういえば、8歳でスキル3つというのは史上最年少だって言ってたな。
――い、言っちゃまずかったかな?
でも、今後仕事をする上で隠し通すのはかなり効率が悪いし。
言うなら早いうちに、正直に言ってしまった方がいい、よな?
僕は簡単に、領主様にスキル【炊飯器】について説明した。
「……なるほど? つまり一瞬でおいしいごはんが炊けて、それを温かいまま保管することができるスキルだというわけか」
「そんな感じです。ごはんの劣化を防ぐわけではないので、炊いたごはんは翌日には食べきりたいところですけど」
「なんというか、相変わらずフェリク君のスキルは凄まじく独特だね……」
そんな「よく分からない」みたいな顔しないで!
今はピンとこないかもしれないけど、使いこなせば素晴らしいスキルなんだぞ!
領主様と話したあと、僕はみんなにパーティーの説明を兼ねた挨拶を行なった。
「――今回のパーティは、レシピ本用のおにぎりのレシピ開発を兼ねています。気づいた点やおいしい組み合わせがあったら、事前に配布したアンケート用紙にご記入お願いします」
挨拶を終えると、皆拍手と笑顔で歓迎してくれた。ありがたい。
こうして星が輝く夜空の下、領主もメイドも貴族も庶民もない、フリースタイルのごはんパーティーがスタートした。
「フェリク!」
「あ、アリア! よかった来られたんだね」
「こんなの来るしかないじゃない。ねえ、オススメはどの組み合わせ?」
アリアはお皿を手に周囲を見回し、キラキラと目を輝かせている。
「オススメかあ。特に食べたいものってある?」
「卵かチーズ! 前にフェリクが作ってくれた鮭とチーズと枝豆のおにぎり、あれすっごくお気に入りなの。今じゃうちの定番になってるわ」
「それは嬉しいな。……ええと、じゃあ」
僕はテーブルの上のおかずを見回し、お皿にピックアップしていく。
「この出汁巻き風炒り卵に、炒めたベーコンと青じそを合わせて食べてみて」
「――――お、おいしい! 変わった味がするけど、でもこれ好きっ! 炒り卵の味つけって塩こしょうだけじゃないのね。不思議なくらいごはんと合う!」
「あはは、気に入ってくれてよかった」
このあとも、僕とアリアはもちろん、その場にいるみんな、それぞれ好きなおかずとごはんを自由に堪能していた。
領主様の反応はどんなものかと気になったが、バトラにあれこれ聞きながら、不慣れながらも案外楽しそうに選んでいる。
よ、よかった……。
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