第135話 ついにレシピ本が完成したぞー!
工場見学をし、グラムスを回ってしばらく経った日の昼下がり。
屋敷のダイニングルームでシャロ、ミアと昼食をとっていると、玄関のドアが勢いよく開けられる音がした。そして。
「フェリク君! レシピ本、ついに完成したよ! それから、試験的に配布した精米機への反応も上がってきたらしい」
フローレス商会の部下を数名引き連れてやってきたアリア父は、レシピ本を掲げながら嬉々として報告してくれた。
ちなみに、アリア父と領主様、それからうちの両親に関しては、自由に屋敷を出入りできるよう、予めグリッド含む使用人たちへと伝えてある。
「わあ……! ついにできたんだね!」
「一刻も早く見せたくてね。配送を待ちきれなくて持ってきてしまったよ」
アリア父からレシピ本を受け取ると、シャロとミアも、自分たちも一目見ようと僕のうしろから本を覗き込む。
「すごい、ちゃんと本になってる……!」
「本当ですね! フェリク様すごいです!」
「おめでとうございます」
レシピ本の表紙には、餅グラタンとライスピザの写真、それから『幸せのお米レシピ』というタイトルが載っている。
「――ふふっ、食べたことある料理がいっぱいで、なんか誇らしいですね!」
「写真もとってもおいしそうです」
「うん。分かってるはずなのに、なんかドキドキするよ」
自分で作った見知った料理も、こうして本になった姿を見ると新鮮さがすごい。
これがプロの編集の力か……!
「近々、十冊ほど見本誌が届くはずだよ。ご両親や身近な人に配るといい。もちろん領主様にもね。フェリク君から直接渡した方が、きっと喜ぶだろうから」
「分かった。――ふふ、嬉しいなあ。僕のお米料理がこんなふうになるなんて」
僕は本を見返して、喜びをかみしめた。
早くアリアにも見せてあげたいな。
「――それから、精米機への反応も上々だよ。大好評だ。レンタルも購入も、すでに大量の予約が入ってる」
アリア父は、契約者が一覧になっている書類をダイニングテーブルへ広げ、嬉々として説明を始めた。
一覧にはグラムスの有名レストランや貴族宅、商家、村などが幅広く名を連ねていて、多くの人々が精米機を待ち望んでくれているのが伝わってきた。
「本当だ、すごいね! それだけみんなが日常的にお米を食べたいって思ってるってことだよね!」
「ああ。そりゃそうだよ。フェリク君の作るお米は本当においしいからね。レシピ本も完成したし、これは期待が持てるぞ――!」
ハイテンションであれこれ計算し始めるアリア父に、この人は本当にぶれないなと思わず笑ってしまう。
――でも本当、大変なこともあったけど、周囲に恵まれたから今があるんだよね。
一人では到底叶えられなかったことが次々と実現されていく状況に、改めて「これってすごいことだよなあ」なんてしみじみと思ってしまう。
恩返しをしたいと思ってるのに、恩が増えていく一方だな。
僕はそんなことを考えながら、おいしいお米とレシピ本、それから精米機が普及したこの国を想像し、胸いっぱいの幸せを噛みしめた。
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