第5話 うちの米を、世界一にして見せる!
「今日のカユー、フェリクが作ってくれたのよ。なんだか匂いもいつもよりおいしそう……!」
食卓に料理を運んでいる途中、父が仕事から戻ってきた。
母はまるで自分のことのように、僕が作ったことを自慢げに話している。
「おお、すごいじゃないかフェリク」
「おいしいといいな。早く食べよう!」
「そうだな。早速いただこう」
席につき、「いただきます」をして、2人ともいつものようにカユーをスプーンですくって口へと運んだ。
そして、驚いたような顔でじっとカユーを見つめ、互いに顔を見合わせる。
「……こ、これ、本当にうちのお米なの?」
「昨日までとはえらい違いだぞ……。いったい何したんだ」
「実は、早速スキル【品種改良・米】を使ってみたんだ」
「――は? す、スキルってだって、さっき授けられたばっかじゃねえか」
――ん? あれ?
「え、でもほら、スキルって使い方が自然と分かるもんだし……」
「そりゃあ使い方はな。でも、分かるのは使い方だけだろ。具体的にイメージできなきゃ、品種改良?なんて何の役にも――」
「……ねえ、実はうちの子すごい天才なんじゃない? だってまだ8歳なのよ、この子。どうしましょう」
さっきまであれだけ憐れみに満ちた目を向けられていたのに、今ではすっかり目を輝かせ、期待に声を震わせている。やっぱり、うまい米は正義だ。
「――フェリク、おまえはまだ子どもだから分からないかもしれないけどな、これはすごいことだぞ。父さんは米農家の息子に生まれて米とともに育ってきたが、こんなにうまいカユーを食ったのは初めてだ」
「私もよ。こんなにおいしいカユーは初めてだわ」
前世では、おいしいごはんが持つポテンシャルをいかに引き出し、いかにおいしく食べるかに全てを注いでいた。
まあ、米大好きだったとはいえ米農家だったわけじゃないし、品種改良はしたことなかったけど。
それでも、しかも収穫後の米でこれだけの力を発揮するとは。スキルの力ってすごい。
「喜んでくれて嬉しいよ。もう少し浸水時間を長くすると、もっとおいしいはずだよ」
「し、浸水?」
「お米を火にかける前に水に浸けておくと、中心まで水が行き届いておいしくなる――んじゃないかなーと」
「そんなこと、考えたこともなかったわ。だってどうせ煮込むのに……」
僕を含め、今日はみんな食が進んで、いつもは余りがちなカユーもあっという間に空っぽになった。
――記憶が戻る前は、僕の人生終わったと思ったけど。
こんな素晴らしいスキルを与えてくれた神様には、感謝してもしきれないな。
これから、やりたいことがたくさんある。
玄米粥はまだまだ好き嫌いの分かれるところだが、精米してふっくら炊き上げたごはんを食べたら、みんなどんな顔をするだろう?
ああ、早く食べさせたい。
村のヤツらは、まだこのスキル【品種改良・米】のすごさを知らない。
僕のこと、外れスキルを引き当てた雑魚だと思ってる。
でも僕は、このスキルでうちの米を世界一おいしい米にしてみせる。
おいしいごはんが炊けたら、いつも優しいアリアにも食べさせてやりたいな。
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