第49話 ごはんが作る笑顔のために!
レシピ本を作りたいという話を聞いた一週間後。
僕はアリア父とともにグラムスにあるユグドラ書店へ赴き、料理本を手掛けている編集部の人と会うことになった。
「――レシピのほかにも、おいしいごはんの炊き方や、玄米と白米の栄養面の違い、それからカユーのおいしい作り方も入れたくて……」
「承知しました。まずは作る料理をリスト化して、それから詳細な材料や作り方、あれば作る際のコツ、写真など必要な素材を集めていきましょう」
説明してくれたのは、20代半ばくらいの女性編集者・ミールだった。
ミールさんは、既に出版されている既存のレシピ本をいくつか机に広げ、必要となるページや情報を細かく教えてくれた。
「撮影時には、うちからスキル【転写】持ちの社員を1人、サポート役を1~2人ほど派遣します。ほかにも何か困ったことがあれば、遠慮なくおっしゃってください」
「助かります。またご連絡します」
……な、なんか緊張してきた!
◆◆◆
「――ということになったよ。シャロとミアにも助手を頼めるかな」
工房へ戻り、僕は早速レシピ本用のレシピ開発を進めることにした。
9歳になれば家庭教師の授業が始まって、今ほど自由に時間が使えなくなるかもしれないし。今のうちに、進められるだけ進めておきたい。
「もちろんです! 買い出しから味見まで何でもいたします!」
「……シャロは味見がしたいだけでは?」
「ええ、じゃあミアは味見したくないんだ?」
「そ、そんなことは言ってませんよっ」
――シャロとミア、最初は堅苦しかったけど、今はだいぶ打ち解けた感あるな。
心を開いてもらえたようで、僕としてはとても嬉しいことだ。
「味見は2人ともにお願いしたいな。意見は多い方がいいし」
「やった! ――じゃなかった、承知しましたっ」
「かしこまりました。……た、楽しみにしてますね」
こうして僕は、通常業務に加えて、レシピ本のためのレシピ開発に着手することとなった。ちなみにページ数は、中表紙や目次、奥付を合わせて80ページ程度を想定しているらしい。
◆中表紙……P.1
◆はじめに……P.2
◆白米と玄米の違い……P.3
◆もくじ……P.4~P.5
◆基本のカユー、白米カユーのおいしい作り方……P.6~P.7
◆ごはんのおいしい炊き方……P.8~P.9
◆おにぎりレシピ……P.10~P.21
◆おこげサンドレシピ……P.22~P.27
◆その他ごはんレシピ……P.28~P.47
◆もち米の炊き方、お餅の作り方……P.48~P.49
◆もち米レシピ……P.50~P.57
◆お餅レシピ……P.58~P.71
◆おやつ、デザートレシピ……P.72~P.77
◆索引、奥付け……P.78~P.79、P.80
……ざっくりとした構成はこんな感じか?
前世でも米レシピをノートに書き溜めてはいたが、さすがにレシピ本を作るのは始めてだ。
ミールさんに見せてもらったレシピ本、それから前世で見ていたレシピ本の記憶を頼りに、少しずつイメージを詰めていく。
――でもこうして箇条書きにしてみると、案外雰囲気って掴めるもんだな。
こっからは、実際に掲載するレシピを何にするか、だな。ふふ。
このレシピ本があちこちで米の魅力を拡散してくれるのだと思うと、そしてみんなを笑顔にできるのだと思うと、思わず顔がにやけてしまう。
――あ、そうだ。
せっかくなら――レシピ開発をイベントにしてしまうのはどうだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます