第27章 執事グリッド
第128話 王城から執事さんがやってきた
「えっ? お披露目パーティー?」
「はい。アリスティア辺境伯様やご両親、フローレスご夫妻、アリアちゃんはもちろん、工場や農場の皆さま――を全員呼ぶのはさすがに難しいと思うので、お偉いさんだけでもお呼びして、盛大にパーッと!」
お披露目パーティーか、たしかにアリかもしれないな。
でも、人手が足りるかな……。
今ここにいるのは、僕とシャロ、ミア、それから工房の従業員6名のみ。
もうしばらくしたら人が増える予定だけど、当分はこのメンバーで乗り切らなければならない。
――屋敷の完成が予定より早かったからな。
そんなことを考えていると、少し離れた先で空間が光り始めた。
あれは――【転移】の力?
また何か危険な相手だったらどうしよう……。
シャロとミアも光に気づいたようで、ミアが僕たちの前に立って警戒を強める。
しかしそこから現れたのは、執事服を身に纏った初老の男性だった。
男性は大きなトランクを持ち、こちらへ向かって歩いてくる。
な、なんだ? というか誰だ???
「あ、あの……?」
「あなた様がアリスティア辺境伯家のご子息、フェリク様でしょうか?」
「――え。えーっと、まあ、はい」
「初めまして。私、王城から参りました執事のグリッドと申します」
お、王城から!?
そんな話聞いてない!!!
「え、ええと、初めまして。どういったご用件でしょうか?」
「突然お訪ねすることになり申し訳ありません。実は王命により、本日からこちらで働かせていただくこととなりました。執事歴は長いので何でもお申し付けください」
王城から来たらしい、グリッドと名乗る執事はそう言って頭を下げた。
というか僕、領主様に土地を借りてるだけの平民なんですけど!?
先ほど領主様に言われた、「国のお金で屋敷を建てたのだから、フェリク君ももう後戻りできないな」という言葉が脳裏をよぎる。
「え……っと、承知しました。その、よろしくお願いいたします……」
「そちらのお二方は?」
「メイドのシャロとミアです。元々は父上が雇っていたメイドなんですが、この度正式に僕の元で働いてくれることになりまして」
「そうでしたか。これからよろしくお願いいたします」
「シャロと申します。よろしくお願いいたします」
「み、ミアと申します。よろしく、お願いいたします」
おお、ミアがこんなに緊張してるのは初めてみた気がする。
でもベテランの執事さんが来てくれるのはありがたいな。
家を取り仕切るのも慣れてるだろうし、分からないことがあったらまずはこの人に聞くことにしよう。
グリッドさんは、執事としての務めを果たしてきたほか、執事やメイドを育成する学校で教師をしていた経験もあるらしい。
無知な僕にとっては、とても心強い存在だ。
「お屋敷のお掃除はもうお済みになられましたか?」
「い、いえ。まだ着いたばっかりで」
「承知いたしました。早速取り掛かります。そちらの二人をお借りしても?」
「はい。僕も一緒にやります! 工房の従業員にも声を掛けてみますね」
グリッドさんは一瞬驚いた様子を見せたが、それからふっと表情を和らげ、柔らかな笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。旦那様は、国王陛下からお聞きした通りのお方のようですね。お仕えできること、嬉しく思います」
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