第57話 【品種改良・米】が実はチートだった
「――し、失礼いたします」
身支度を整え、僕はミアに連れられて屋敷のリビングへと向かった。
そこには、領主様に引けを取らない整った顔立ちの、大人の女性と女の子がいた。
恐らく、この2人がアリスティア夫人とフィーユ様だろう。
「おお、フェリク君。朝から突然、悪かったね」
「い、いえそんな」
「あなたがフェリク君?」
「は、はい。お初にお目にかかります。フェリク・クライスと申します。訳あって、1年ほど前から領主様にお世話になっております」
き、緊張で声が震える……。
「……驚いたわ、まだ子どもじゃない。フィーユよりも年下ではなくて?」
「ははは、そうだ、そういえば年齢を伝えていなかったね。この子は先日9歳になったばかりだよ」
いったい何の会話がなされているのか。
僕の年齢、今そんな大事か……?
「え、ええと、あの、何か……」
「あら、ごめんなさいね、挨拶もせず。わたくしはマリィ・アリスティアよ。そしてこちらが娘のフィーユ」
「フィーユです。よろしく」
フィーユは、僕より少し年上――恐らく12、3歳くらいに見える。
ふわふわとした金髪が美しく輝く彼女は、身のこなしも洗練されている。
さすがは辺境伯の令嬢だ。
「あの甘酒と七草粥を従者に伝えてくれたのは、あなたで間違いないのよね?」
「え、ええ。お体の具合があまりよろしくないとお聞きしまして。少しでも力になれれば、と。お口に合いましたでしょうか」
「ええ、とってもおいしかったわ。フィーユはお粥もだけれど、特に甘酒を気に入って飲んでいたわね」
「ええ、潰したいちごを入れていつも飲んでたわ」
あ、気に入ってくれたんですね!? よかった!!!
「光栄です。それで、体調の方は……」
「おかげさまで、わたくしもフィーユもすっかり元気よ。本当に、信じられないほど素晴らしいスキルだわ」
「き、恐縮です……」
……それにしても本当、病み上がりとは思えないほど肌艶がいいな。
まあ上級貴族だし、それだけ回復してから戻ってきたのかもしれないけど。
「あのお米があれば、お医者様もいらなくなりそうね」
「ほう? そんなに効果があったのかい?」
マリィの言葉に、領主様も興味を示している。
でもまあ栄養満点とはいえ、そんなことはないけどな!
「だって、お米にスキルとしての回復効果が付与されているのよ? そんな食材、これまで見たことがないわ」
「な、なんだって? フェリク君、君、そんなことまでできたのかい?」
えええええええええ。
「い、いやいやいや。たしかに甘酒は米麹を使用した発酵食品で、必須アミノ酸とかビタミンB群とか、体にいい成分がたくさん含まれてます。でもそれはあくまで体を整えるもので、そんな魔法みたいな効果は――」
「……フェリク君、あなたもしかして無自覚にあれを?」
「……へ? え、あれ、とは何のことでしょうか」
「わたくしは、【効能解析・薬】というスキルを持っているのよ」
……ん? んん?
つまりどういうことだ???
「わたくしの実家、ファルマス家は、代々薬の研究をしている家系なの。その影響なのか、薬の効果や効能を解析できるスキルを授かっているのよ」
「は、はあ……」
「そのスキルが、あなたがくれたお米を薬だと、しかもスキルによる強力な万能回復効果を持っていると判定したの」
「――――はい? え!?」
な、なん……だと!?
もし、もし仮に【品種改良・米】にそんな力があるとするなら。
ただ米をおいしく強くするだけでなく、そんな効果を付与することができるなら。
それはもう、チート級のスキルなんじゃ!?
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