第58話 実は今までも発動させてた可能性

「え、スキル【品種改良・米】にそんな効果が……!?」

「まあ、本当に無自覚だったの?」

「も、申し訳ありません。ただ、お粥に合うお米を作ったとき、早く元気になってほしい、みたいなことを考えてたと思います」

「…………。ふふ、あなたはとっても優しい子なのね。会ったこともないわたくしたちのために、無自覚にスキルに影響を与えるほど回復を願ってくれていたなんて」


 マリィは一瞬驚いたような顔をして、ふっと小さく、優しく微笑んだ。

 領主様にはとんでもなくお世話になってるし、その領主様のご家族の健康を願うのは普通のことだと思うけど……。

 というか、自分のスキルに隠されていた力が凄すぎて、頭の混乱が収まらない。


「……フェリク君、その何らかの特殊効果を込めたお米を、マリィたち以外に渡したことは?」

「わ、分かりません……。僕も今初めて自覚した、というか、未だそんなことがあり得るのかと思っているくらいで……」


 これまでの【品種改良・米】や【精米】、【炊飯器】の効果も、もちろんスキルがなければ成し得ない素晴らしい効果ではある。

 しかし、これらはすべて時間や手間、作業をショートカットしているにすぎず、前世で見てきた文明の利器がスキルに置き換わっただけだった。

 だが、今回の米に付与された効果はレベルが違う。


「そ、そうか。フェリク君、申し訳ないが、しばらくその力は秘匿してもらえないだろうか。その力が広く知られれば、君の身に危険が及ぶかもしれない」


 ですよね! 僕もそう思ったよ!!!


「は、はい。分かりました」

「マリィ、念のため、一度フェリク君が作っているものを解析してみてくれないか」

「分かりました」

「な、なんだかすみません……」

「そんな、謝らないでちょうだい。わたくしもフィーユも、あなたのおかげでここまで回復したのよ」


 マリィのその言葉に、フィーユもうんうんと頷いてくれる。

 今回の力は、下手をすれば監禁されてもおかしくないものだと思う。

 本当に、アリスティア家の人たちが悪人じゃなくてよかった……。


 ほとんどの人たちは、食事にそんな超常的な効果は求めていない。

 というより、そんな発想すらない。

 その常識を、僕のスキル1つで崩してはならない。そんな気がした。


「……あの、僕はこの仕事を続けていてもいいのでしょうか」

「それはもちろん。すべての食品に効果が付与されるなら、普段君の料理を食べている私やエイダン、それからメイドたちにも何か変化があるはずで――いやでも、言われてみれば最近疲れにくくなったような」

「ええ……」


 そういえば、父の農場でも甘酒が大流行してるらしい。

 飲むと疲れが取れるとかなんとか。

 言われた時は、単純に甘酒の効果だと思ってたけど。実際そうだとは思うけど。

 でも、もしかしたら――。


「ま、まあ多少の効果ならば、そうそう知られることもないだろう。マリィのスキルは、かなりレアで高度なものだからね。でも、少し解析を急いでくれ」

「ええ、そうします」


 あ、あまり強い念は込めないように気をつけよう……。


 僕はただおいしいごはんとともに平和に生きられればそれでいいので!

 引き続き楽しく生きられますように!!!

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