第30章 4つめのスキル!?

第144話 住民がやってくるかもしれない!?

 お披露目会も無事終え、僕たちは普段通りの日々を取り戻していた。

 が、領地もまだまだ全然開拓できてないし、王城で行なわれる貴族会議への初出勤を控えている。

 ちなみに出発は一週間後。当日の朝、王城から迎えが来ることになっている。

 貴族会議なんて大それた場所に僕を参加させて、いったい誰にどんなメリットがあるというのか。正直泣いて逃げ出したい……。


 ――でもこれは、僕がこの土地で自由に暮らすための条件だからなあ。

 国王様と領主様に勝手に決められたこととはいえ――いや、だからこそ、無視するわけにはいかない。はあ。


「失礼いたします。フェリク様、今よろしいでしょうか?」

「――グリッド。うん、どうしたの?」


 執務室でデスクワークをこなしていると、グリッドが何か書類のようなものを持って現れた。貴族会議中止のお知らせだったらいいのに。


「クライス領へ移住したい、出店したいという話がちらほらと上がっておりますが、いかがいたしましょう?」

「えっ、移住!? 各領主の了承が得られてるなら、僕としては大歓迎だよ。でも証明書は必ずチェックしてね。トラブルになったら怖いし」

「承知いたしました」


 ガストラル王国に暮らす各領民の移住の可否は、基本的にその土地を所有している領主次第なところがある。

 アリスティア領は基本的に奴隷以外であれば移住自由だが、ガストラル王国には「領民は土地の付属物=領主の所有物」と捉え、移住には領主が発行する許可証が必要な場合も多い。

 そうした領地の人々を勝手に移住させると、トラブルの元になりかねない。

 ――と、以前領主様が教えてくれた。


 領民を土地に縛りつけるなんて納得いかないが、それがこの国のルールである以上、僕はそれに従うしかない。

 つくづく、自分が領主様の土地の領民でよかったと思う。


「では、住民を住まわせる区画を検討し、出店概要と併せてまとめます。既に活用が決まっているエリアはございますでしょうか?」

「ええと、まずこの辺に農園を作りたいと思ってる。それから従業員の何人かが、せっかくなら家を持って家族と暮らしたいって言ってて――。あと、おじさ――フローレスさんもうちの領に移住したいみたいなんだよね。近い方が何かと便利だし」

「承知いたしました。そうしましたら――」


 地図を広げてそれを見ながら、僕はグリッドと相談しつつ領地開拓について話し合った。本当に領主みたいだ。まあ実質領主なんだけど!


「――では、あとはこちらで一度練りまして、再度ご提案いたします。お時間いただきありがとうございました」

「こちらこそ。いてくれて本当に助かるよ」


 住民が来てくれたら、いよいよ僕の領主生活が本格的に始まる。

 グリッドやシャロ、ミアがいてくれるとはいえ、僕にうまくやれるのだろうか?


 ――でもおじさんが近くにいるのは助かるな。

 領内に住んでくれれば、いざとなったら直接出向けるし。


 アリア父の所有スキル【音声伝達】は、彼がスキルを発動させて繋いでいる間しか伝達できない。つまり、こちらのタイミングで連絡を取ることはできないのだ。


 それでも、この世界においては非常に重宝されるスキルの1つだが。

 前世で電話やメール、チャットなどで繋がり放題だった僕にとっては、正直とても不便に思えてしまう。

 移動も、転移師がいなければ数日~数週間かかる移動がざらに発生するしね。


 アリアも今は転移師見習いとして師匠のところに住み込んで修業してるけど。

 それでも比較的長めの休暇には帰ってこられるらしい。

 また家が近くなるのは素直に嬉しいな。

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