第55話 マルゲリータ風ライスピザ【レシピあり】
「悪かったよ。ほら、口直しにこれでも飲んで」
「うう……これは?」
「いちご入りの甘酒だよ。潰したいちごと甘酒を混ぜたんだ」
「……甘酸っぱくておいしい」
「それはよかった。それより、何が食べたい?」
「……チーズ」
こいつ本当にチーズ好きだな!!!
――あ、でもそれなら。
「よし、ピザにしよう! マルゲリータなんてどうかな。アリア好きだったよね?」
「ピザ? マルゲリータは大好きだけど、でも今日はごはんじゃないのね」
「いや、ごはんで作るライスピザだよ。ごはんをこんがりモチモチに焼いて、ピザみたいに具材を乗っけて焼くんだ」
「ごはんでピザができるの!? 私、それがいいっ!」
「よし決まり! じゃあそれでいこう」
僕は早速準備に取り掛かることにした。
まずは炊飯器――代わりに使っている木箱に洗った米と水を入れ、スキル【炊飯器】でごはんを炊く。
「これ、ごはんを炊く魔導具だと思ってたけど違うのね」
「え? ああ、うん。僕の新しいスキルだよ」
「……はあ。なんかもう、フェリクには一生勝てる気がしないわ」
「ええ、アリアの転移の方が高位スキルだろ」
「…………だから……に……しいのよっ。フェリクのばかっ」
アリアが小声で何か言った気がするけど――まああとでいいか。
ごはんが炊けたらボウルに入れ、塩コショウと片栗粉、水を少々加えて混ぜて、フライパンで両面をこんがり焼く。
それをオーブンの天板に乗せて、トマトソース、それからモッツァレラチーズをたっぷりトッピングして――
――あ、そうだ。
アリアはこれから仕事だし、スタミナをつけるためにベーコンも乗せておくか。
トッピングが完了したら、220度に温めたオーブンでこんがり焼けば完成する。
ちなみに僕は、香りを活かすためバジルは最後に乗せる派だ。
「――っ! いい匂い!」
焼けたライスピザをオーブンから取り出すと、魅惑的なピザの熱気と香りが辺り一帯を支配する。
それに加えて、ほのかに米の香ばしさも漂っている。
「フェリク様、ただいま戻りまし……わわ、何これすっごくいい匂い!」
「これはピザ、でしょうか。たまりませんね」
ピザを切り分けていると、そこにシャロとミアが戻ってきた。
2人には、ごはんのおかずに相応しい、醤油や味噌に合いそうな食材がないか、街に買い出しに行ってもらっていたのだ。
「お、おかえり。ちょうどよかったよ。2人も食べる?」
「え、た、食べたいですけど、でもそれはアリア様のために焼いたものでは?」
「そうだけど、足りなければいくらでも作ればいいし。アリアもいいよな?」
「……しょうがないわね。2人には昨日お世話になったし、特別よ!」
アリアはため息をつきながらそう言ったが。
しかし特に嫌がる様子もなく、むしろ少し嬉しそうだった。
アリアの言動は、シンプルそうに見えてちぐはぐだ。
「やった! ありがとうございますアリア様」
「それではご相伴にあずかります」
こうして僕たちは、8つに切り分けたピザを4人で食べることになった。
「これ、下がごはんなんですね!? すごいです!」
「ああ、うん。ライスピザっていうんだ。普通のピザと違って生地を発酵させる手間もいらないし、すぐできるから便利だよ」
「ピザなのにごはん……なのに合いますね……おいしいです」
「本当、ごはんってこういう食べ方もできるのね! 万能じゃないっ」
「お、アリアも分かってきたね。そう、ごはんは万能なんだ」
うん、にんにくの効いたトマトソースがごはんに染みて、最高にうまい。
最近はレストランでも徐々にごはん料理が受け入れられてるし、これも人気が出そうだな。今度おじさんに打診しよう。
「なんか、すっごく元気になってきた! 今日もお仕事頑張るわ」
「何か困ったことがあれば、遠慮なく私やシャロに相談してください。私たちにできることなんて知れてますが、一応これでもメイドとしては先輩ですから」
「そうそう、ここでの仕事は大変ですから、使える仲間は使わないと損ですよっ」
「親切にしてくださって助かります。ありがとうございます」
――なんか微笑ましいな。
この2人が味方についてくれてるなら、とりあえず安泰かな。
このとき僕は、そう思っていた。
*****
【レシピ】マルゲリータ風ライスピザ(写真あり)
https://kakuyomu.jp/users/bochi_neko/news/16817330652318799204
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