第139話 最初に雇う転移師はアリアがいい

「……でも、最初に正式な形で雇う転移師はアリアがいいな」

「――――っふぇ!?」


 僕がそうつぶやくと、背後にいたアリアが驚いた様子で間抜けな声を上げた。


「わわわわわ私は無理よ! だって、見習いを卒業して仕事にするには、最低でも2~3年はかかるのよ!?」

「……そっか。なら待つよ。アリアが4級転移師として認められるまで」

「で、でもそんな……」


 アリアは真っ赤になってうろたえている。

 でもこれは、嫌ってわけじゃない――ってことだよな。多分。


「はっはっは。分かった。ならアリアが4級転移師になるまで、うちの転移師を1人貸してあげよう。給与は君が支払うことになるが……これならどうだい?」

「いいんですか!?」

「かまわないよ。普段はよそへ派遣していることが多いが、うちにもそれなりに転移師がいるからね。バトラ、帰ったら早速手配してくれ」

「かしこまりました」


 こうして僕は、転移師を貸してもらうことになった。


「……もう、フェリクのばか。私のことなんて気にしなくていいのにっ!」

「僕はアリアがいいんだよ。……アリアは嫌?」

「い、嫌じゃないっ! けどっ! ……もうっ、ほんとにばか!」


 えええ……。

 まあでも顔は喜んでるし。

 これはきっとツンデレってやつだな。うん。


「まったく、我が娘ながら幸せ者だなあ。10歳にして就職先が決まるなんて。ああでも、アリアの本当の将来の夢は――」

「ち、ちょっとパパ!?」

「はは、冗談だよ。……フェリク君、これからも娘と仲良くしてくれると嬉しい」

「もちろんです。アリア、楽しみに待ってるね」

「……分かったわ。立派な転移師になるから待ってなさい!」


 アリアは自信たっぷりの笑顔でそう言った。

 アリアは頑張り屋だから、きっと立派な転移師になるんだろうな。


「――それじゃあ、僕はそろそろ準備に入るね。グリッド、シャロ、案内を任せてもいい? ミアは僕とキッチンへ」

「承知しました!」

「承知いたしました」

「フェリク、私も見てていい? 今はお休み中だけど、一応クライスカンパニーの従業員だもの」

「――分かった。じゃあアリアもおいで」

「やった! ありがとう!」


 その場のことはグリッドとシャロ、それからアリア父と手伝いに来てくれたフローレス商会の従業員さんに任せて、僕はアリアとミアを連れてキッチンへ向かった。

 屋敷の中を案内したあと、食事会でお米料理を味わってもらう流れになっている。


「ねえフェリク、今日は何を作るの? フェリクのごはん久しぶりだわ」

「もう下準備は終わってるんだ。今日は王女殿下からも好評をいただいた天津チャーハンと、母さんが開発したオムライス、それからお土産でいただいた料理も出そうと思ってる。あとは――」


 実は今回、とっておきのメニューを用意している。

 実は王都に行ったときに、いろんなスパイスを手に入れてきたのだ。

 つまり――!


「今日はカレーをお披露目するよ!」

「か、カレー……?」


 僕の勢いが強すぎたのか、アリアはぽかんとした様子でこちらを見ている。

 でも仕方ないよね。だってカレーだし!

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