第121話 アリアへの思いと今後のこと

「……でも本当、まだ9歳とはいえ、アリア様も女の子です。甘い言葉でどっちつかずな状態を続けていては可哀相かもしれませんよ?」


 あ、甘い言葉で!?

 何か言ったっけ……。

 というか9歳に何を求めてるんだこいつは。

 ま、まあでも――。


「…………シャロは、アリアは僕のことが好きなんだと思う?」

「え――今更そこからなんですか!? どう見たって好きじゃないですか」

「そ、そうなのか」


 いやまあ、正直言うと薄々そんな気がしてないでもない。

 単なる寂しがり屋の世話焼きである可能性も十二分にあるが、これまでの言動や周囲の反応からしても――。


「……で、でも、僕がアリアと付き合うなんてそんなの」

「どうしてですか? お似合いじゃないですか! 私はお2人がいちゃいちゃしてるのを想像するだけで、ニヤニヤが止まりませんよ?」

「へ、変な妄想するなっ!」


 ――はあ。まったく。


 いつまでも一定の距離を保ち続けているミアと違い、最近のシャロはけっこうぐいぐいくる。

 自分がアリスティア家に仕えるメイドで、僕の世話係としてここにいるってことを忘れてるんじゃないかと思うくらいだ。


「シャロこそ、好きな人とかいないの? 年齢的には、僕よりよっぽどそういうのがあってもおかしくないと思うんだけど」

「へっ? じ、女性にそんなことを聞くのは失礼ですよっ!」

「悪いな、僕は男女平等主義者だ」

「ええー。そうですね、私はこれでも一応貴族なので、家同士が決めた許嫁がいるんです。――あ、でも良い人ですし、嫌ではないですよ」


 ――え。な、なんだと。


「し、シャロって貴族だったの!? じゃあ僕、ずっと貴族様にお世話されてたってこと!? な、なんか申し訳ありません……」

「もーっ、やめてくださいよっ。ここにいる以上今の私はメイドですし、これも旦那様の命令です。それにフェリク様も、今や辺境伯家のご子息様じゃないですか! うちは子爵家なので、貴族の中では下の方ですよ」


 シャロはおかしそうに笑う。

 高飛車なところも全然ないし、嫌な顔ひとつせず面倒見てくれるし、まったく気づかなかった……。

 でもそうか、シャロから感じるこの謎の余裕は、育ちによるものなのかな。


「――それで、フェリク様はどうなんです? まさか話を逸らして逃げる、なんてことしませんよね?」

「――ぐ。ぼ、僕は……」


 ――どうなんだろう?

 正直、今もよく分からない。


「……ま、まだよく分からない、かな」

「そうですか……フェリク様も、恋愛に関しては年相応なんですね。申し訳ありません、出すぎたことを。ただ私、2人にはうまくいってほしくて……。アリア様は、元メイド仲間でもありますから」

「恋愛的な意味で好きかどうかはともかく、アリアのことは今後もずっと大事にしていくつもりだよ。極力寂しい思いはさせたくないし、困ってたら助けてあげたいと思ってる。アリアには、笑っててほしいからね」

「そ、そう、ですか。でもそれってもう……。ふふ、2人の恋路が楽しみですねっ」


 恋路――か。

 今後どうなるかはともかく、アリアが僕を思ってくれてるなら、僕も真剣に考えないとな。

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