第141話 アリア父はどこまでいってもアリア父!
「ありがとう! ちょうど手伝ってくれる人がほしいって思ってたところなんだ。これはバターチキンカレーだよ。おじさんも味見していく?」
「ありがとう。いいのかい? 足りそうなら少しもらおうかな」
アリア父は僕から味見用の小皿を受け取り、カレーをすくって口にした。
そしてみんなと同じように驚いて固まり、しばらく無言のままカレーを見つめる。
アリア父は、仕事柄ガストラル王国中を飛びまわっていて、さまざまな貴族の会食に参加して豊富な種類の料理を食べている。
だからもしかしたら――と思ったが、アリア父もカレーは知らなかったらしい。
「――フェリク君、これは革命だよ。私もスパイスを使った料理はいくつか食べたことがあるけど、こんなにも魅了される味は初めてだ。このカレーとやらに使用したスパイスは、どれも普通に手に入るものなのかい?」
「ええと……この辺だと分からないけど、王都にはたくさん売ってたよ。金額も安くはないけど、手が出ないってほどの値段でもなかったかな」
「この料理、作ったのは今回が初めてだって言ってたね? これは君の武器になり得る料理だ。ぜひとも展開の方法を考えよう。スパイスも、うちでまとめて仕入れれば多少はどうにかなるだろうし――」
アリア父は、まるで子どものようにワクワクキラキラしながら、カレーを使ったビジネスプランを話し始めた。
どう考えても10歳相手に話すことじゃない!
「う、うん。ありがとう。でもとりあえず今はこのお披露目会を――」
「ああ、そうだった。ごめんごめん。また今度じっくり話そう」
「まったくもう。パパは本当にどこまでいってもパパよね……」
アリア父が恥ずかしそうに笑うと、アリアが呆れたようにため息をつく。
そんな二人を見て、周囲から自然と和やかな笑いが起こった。
本人たちがどう思ってるかは知らないけど、いい親子だよな本当。
「――それじゃあ私は会場へ戻るよ。皆さん。あとはよろしくお願いします」
「お任せください!」
「我々としても、フェリク先生からこうして料理を学べるのは嬉しいですからね」
こうして手伝ってくれる料理人が増えたことで、天津チャーハンとオムライスは驚きの速度で完成へと向かった。
アリア父が集めてきた料理人はプロとして働く一流ばかりで、当然、手際の良さは僕なんかの比じゃない。力もある。
レシピさえ分かってしまえばあとはこっちのもの、と言わんばかりのスピードで、あっという間に料理を仕上げてくれた。助かったああああ!
「フェリク様、あとは私たちに任せて会場へ。皆さまがお待ちですよ」
「――う。そう、だね。うん。行ってくるよ」
完成した料理をみんなに任せて、僕は挨拶をするために会場へ向かった。
本当は、みんなの前で話すなんてしたくないけど!
でも、力を貸してくれるみんなのため、そしてお米のためになるなら――!
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