第11章 アリアがメイドに!?

第51話 「おいしいごはん」は、人を幸せにする【レシピあり】

「父さん、母さん」

「――ん? おお、アリアちゃんはもういいのか?」

「うん、僕が教えた組み合わせを家族にも勧めてくるって」

「そうか。にしても、短時間でよくここまで揃えたな」

「本当、お母さんびっくりしちゃったわ~」


 両親にごはんパーティーのことを伝えたのは、今日の昼ごろ。

 そこから準備を進めたのだから、まあ自分でもよくやったと思う。

 もちろん、工房の従業員やメイドさんたちの手伝いがあってこそだけど。


「2人は、何か気に入った組み合わせはあった?」

「全部うますぎて胃袋が足りねえよ。でもそうだな、父さんはこのきのこのオイル漬けってのが好きだな。酒が止まらなくなる」


 きのこのオイル漬けは、オリーブオイルとにんにく、鷹の爪で炒めたきのこ類を塩コショウで味つけして瓶に詰め、オリーブオイルを注いだもの。

 しっかり炒めて水分を飛ばし、瓶詰めする際に空気を抜くことで、保存食としても重宝する。今日出したのも、少し前にたまたま作っていたものだ。


「お母さんは、なめ茸?と青じその組み合わせが好きだったわ。これ、もしかしてお酢と醤油? ちょっとさっぱりしてて、青じその爽やかさと相性がいいわね」

「この2つを組み合わせるとは、さすが母さんだね。そうそう、酢と醤油。あとはみりんと酒、鷹の爪も入ってるよ」


 えのき茸を炒め、酒、醤油、みりん、酢、鷹の爪で味つけしたなめ茸は、前世の幼少期から僕の大好物だ。

 元々は瓶詰めされたものを購入していたが、作った方がコスパがいいことに気づいてから自作するようになった。

 ごはんをおいしく食べるためなら、多少の手間は厭わない。


「ありがとう、参考になったよ。どっちもよく作り置きしてるから、今度渡すね。引き続き楽しんで!」

「フェリクもね。あまり無理しちゃだめよ? あと、メイドさんや従業員の方たちもたまには休ませてあげるのよ?」

「はーい! 分かってるよ」


 あの2人、休みをあげても工房に来るんだよな……。

 僕は別にいいけど、大丈夫なんだろうか。無理してなきゃいいけど。


「――あ、フェリク様」

「ん? ああ、ミア――とシャロも。2人とも楽しんでる?」

「はいっ、それはもう! 以前フェリク様がアリア様に作ったという鮭とチーズ、枝豆の組み合わせを試したんですけど、これたまりませんね!」

「私はこの鶏生姜そぼろというのが好きです。体にじんわり染み渡ります」

「あははっ、ミア、言い方がおばあちゃんみたいっ」

「なっ――誰がおばあちゃんですかっ!」


 シャロの言葉に、ミアは真っ赤になって反論する。可愛い。


 ――この2人、どんどん仲良くなっていくな。

 なんかこう、2人の娘の成長を見守ってる気分だ。いいぞ、うん。


 ちなみに鶏生姜そぼろは、鶏ひき肉とみじん切りにした生姜を炒め、醤油とみりんで味つけしたもの。

 醤油とみりんの甘辛味は、鶏の深いうまみをこれでもかと引き出してくれる。

 そこに生姜を加えることで味に締まりが出て、ごはんのお供としてより最適化されるのだ。


「みんなそれぞれ気に入ったのがあってよかったよ」

「フェリク様はどれがお好きなんですか?」

「僕? 僕は……全部かな!」

「ええーっ! ずるい、そんなの私もですっ」

「私も全部好きです」


 最初は、レシピ本のためのレシピ開発に繋がれば、と思って企画したごはんパーティーだったけど。

 みんな幸せそうに食べてくれてるし、開催して本当によかった。


 ちなみにアリア父は、みんながどのおかずをどれくらい使っているかの統計を取り、「これは売れる!」やら何やら言いつつ嬉々としていた。

 なんというか、うん。べつにいいけどさすがだな!!!



 *****

【レシピ】「出汁巻き風炒り卵、ベーコン、青じそのおにぎり」含むおにぎり5種(写真あり)

https://kakuyomu.jp/users/bochi_neko/news/16817330652107992452

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る