第2章 精米からのツヤツヤごはん!
第6話 新たなスキル【精米】を手に入れた!
翌朝。
寝る前に鍋に米を浸しておき、それで朝食のカユーを作ってもらった。
今日もカユーがうまい。幸せで涙が出そうだ。
そんなことを考えながら朝食を済ませたころ、急に父が真面目な顔で「おまえに大事な話がある」と言いだした。
な、なんだ? 僕何かしたっけ?
「……え? な、なに?」
「昨日あのあと、母さんとも話をしてな。おまえの才能は、親として放ってはおけないって話になったんだ」
「ええ、そんな大げさな……」
なんて言いつつ。
内心では僕のスキルが、というより米の重要性が認められたことが嬉しくてたまらなかった。ふっふっふ。
今までも、うちの両親は米農家としてやるべきことはやっていた。
でもそれは、「水田を受け継いだから」という何となくの理由であって、生きるためであって、米への愛情を感じるかと言われたらノーと言わざるを得ない。
うちだけでなくほとんどの米農家がそうした惰性でやっており、米文化は「まずい」「貧乏くさい」と衰退する一方だ。
――でも、今は違う。
父さんも母さんも、僕が作ったカユーを食べて米の可能性を感じてくれたんだ。
米を何より愛してきた僕にとって、そんな嬉しいことはない。
「大げさなんかじゃない。父さんは今まで、米をおいしいものにしようなんて考えもしなかった。米は今でも安価で腹を満たせる庶民の味方だが、それだけだと思ってた。でもおまえは、スキル授与からたった数時間であんなにうまい米を作りだした」
「う、うん……」
「そこでだ。フェリク、おまえに頼みがある。うちの米ならいくらでも使っていいし、失敗してもいい。必要なものがあれば極力どうにかするし、水田も自由に使えるよう一部おまえにやる。だからクライス家を、米農家の未来を救ってくれ」
父はそう、真剣な様子で頭を下げた。
父のこんな姿を見るのは始めてだった。
「ち、ちょっと父さん、顔をあげてよ。僕がスキル【品種改良・米】を気軽に試せたのは、父さんと母さんが田んぼを守ってきたからだよ。それに、僕からもお願いしようと思ってたんだ。だから嬉しいよ。ありがとう」
「フェリク……」
僕がそう言って笑顔を見せると、父も母も喜び涙をにじませた。
――僕は本当に、なんて恵まれた環境に転生したんだろう。
そして何より、よくぞ戻ってくれた前世の記憶!
神様ありがとうございます!!!
目を閉じ、そう神に感謝の言葉を捧げたそのとき。
『つ、通じますかーっ!? フェリクさーんっ!』
「!?」
『あっ、あのっ、そのまま目を閉じて聞いてください。私、あれです。神様です』
――え。まずい。
米への希望が見えたのが嬉しすぎて、ついに幻聴が……。
『幻聴じゃないです! 今、神界からあなたの心に直接語りかけています。ちなみにほかの人には聞こえてないので、返事は脳内でしてくださいね』
(は!? ――え、ええと。こうかな)
『そうですそうです。それでですね、あなたにはもう1つスキル【精米】を与えることになってたんですよ。なので今あげちゃいますね! えいっ☆』
そんなかんじ!?
あの厳かな中で与えられる授与式はなんだったんだ。
『あなたは前世で心からお米を愛し、人生をお米に捧げていたにも関わらず、楽しみにしていた新米を食すことなく事故で亡くなるという悲しい結末を迎えました。ですので、現世ではぜひお米を存分に楽しんでほしいのです』
――その割には、マズいカユーしかない世界に転生しましたけど!?
い、いやでも、結果的に素晴らしいスキルが貰えたわけだし良しとしよう。うん。
(あ、ありがとうございます……)
『いえいえ。それでは私はこれで! 素敵な生をお過ごしくださいね☆』
「……フェリク? 急にどうしたんだ。大丈夫か?」
「あ、う、ううん何でもない。それじゃあ、おいしいごはんを楽しみにしててね!」
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