第28章 充実していくお米文化

第133話 お屋敷とレシピ本のお披露目会に向けて

 執事グリッドを始めとする優秀な使用人たちの働きによって、新たな屋敷での生活も整い始め、僕は日常を取り戻しつつあった。

 とは言っても、まだまだやることもやりたいことも山積みなんだけど。

 でも、レシピ本のことを考えられるくらいには余裕ができた。


 僕はアリア父に連れられてフローレス商会の本社へ行き、撮影がまだだった料理を作って、アリア父とミールさん、出版社の人たちとともに撮影を進めていく。

 レシピ自体は既に全部提出済みで、撮影が終われば僕の仕事は完了だ。

 ――これが完成すれば、多くの人に僕の考えたレシピが一気に広まるのか。

 なんか、ワクワクを通り越してゾクゾクしてきた!


「――お疲れさまです。撮影は以上となりますので、フェリクくんにしていただくお仕事はあとチェックくらいですね。問題が発生しなければ、ですけど」


 ミールさんによると、たまにスキル【転写】が失敗することがあり、そうなると作り直しが発生するらしい。

 もしそうなったら、すみませんがまたお願いします、と説明された。


「ただいまー! レシピ本の撮影、終わったよ!」

「おかえりなさいませ旦那様」

「お疲れさまですフェリク様。ついに終わったんですね! 楽しみですね~!」

「まさかレシピ本まで手掛けておられるとは。完成したらぜひ私も拝見させていただきたく思います」

「私もとても楽しみです」


 屋敷へ戻りレシピ本のことを話すと、みんな自分のことのように喜んでくれた。


「アリアちゃんも心待ちにしていましたし、本が完成したタイミングでお披露目会をしましょう」

「うんっ! この屋敷はみんなの協力があって建てられたものだし、せっかくならちゃんとしたいな」


 この屋敷を建てる費用は国王様が出してくれたらしいし、本当ならお呼びしたいところではある。

 ――けど、僕みたいな平民が声を掛けられる相手じゃないし。

 どうするべきか悩むところだ。

 一応、お礼状はお送りしたけど……。


「――でしたら、私もお手伝いいたします」

「ありがとう! グリッドさんが手伝ってくれるのは心強いよ!」

「旦那様の生活をサポートするのも、我々の仕事ですから。何なりとお申しつけください。――それから、私のことは『グリッド』と呼び捨てでお願いします」

「――わ、分かった。よろしくね、グリッド」


 初老の男性を呼び捨てにするのはかなり抵抗があるけど、郷に入っては郷に従えって言葉もあるしね。ここは大人しく従っておこう。


「――そういえば、明日は久々に工場へ行こうと思うんだ。シャロとミアも同行してくれる?」

「もちろんです! 工場、ずっと気になってたんですよね~♪」

「私もぜひご一緒させてください」

「そうか、二人とも行ったことなかったよね。なかなか連れて行けなくてごめん。せっかくだし案内するよ。――って言っても、僕も二回目なんだけど」


 最近ずっと忙しくて、すごく久々になっちゃったな。

 おじさんが度々様子を見に行ってくれてるらしいし、定期的に報告は受けてるけど。

 でもやっぱり、たまには実際に足を運んで自分の目で見たい!

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