第79話 お久しぶりです
「今日も颯汰先輩おやすみ……美吹先輩もおやすみだし一気に差が開いてる気がする……」
お客さんのいないアイドルの時間。ホールの清掃をしている時に考えてしまうのは、颯汰先輩のこと。それと恋敵の美吹先輩。
二人は今頃何をしているのだろうか。二人で実家に行くなんてもう私の出る幕はないのでは? そんな弱気な気持ちが芽生えてしまうけど、首を振って振り払う。
「そんなことない……まだ私にも挽回の余地はある。颯汰先輩が帰ってきた時のために綺麗にしておかないと」
お客さんがいないからって手は抜きません。基本をしっかりすれば恋だって叶うから。私はそう思う。
「あと、先輩たちが帰ってくるまで3日かぁ。長いなぁ。先輩に会いたいなぁ」
シフト表を見ると水曜日には戻ってくるみたいです。
二人がいないことで実感したことがあります。それはあの二人がいないとホールが全然回らないってこと!
いつも土日は先輩たちがメインで仕事をしてくれていた。今日はいつも颯汰先輩がしてるデシャップをしたけれど忙しさが半端じゃなかった。
颯汰先輩はいつもこんな大変なところをしていたの? 私たちのフォローも欠かさないで?
凄すぎます。でも、私も先輩たちがいない今が成長できる時! 頑張らないと。
そしてよしよし頑張ったねって褒めてもらうんです。仕事なので頑張るのは当たり前かも知れませんがそれでもして欲しいです。
「あのーすみませーん」
「あっ、はいただいま!」
発券機の使い方の分からないお客さんが来たようです。気持ちを切り替えて仕事に集中です。
◆◆◆
「ここがよく遊んでた公園で野球とかしてなあ。一回俺のホームランがあっちの家の方まで飛んじゃって窓割って怒られたよ」
「へぇ〜。颯汰くん野球得意だったんだ」
今は美吹と地元を散歩中。彼女が俺の地元を知りたいと言うことでこうしてのんびり地元紹介だ。
団地の公園に行ってそのまま通学路を進む。小学校の近くを流れる川の方に行こうかなって思ってる。
水着があれば少しくらい水遊びが出来たのかな。美吹の水着か。そんなの最高に決まってるだろ。
「ちょっとニヤニヤしてる」
「いやしてないから!」
ごめん美吹。ちょっと想像してしまった。
と、道を歩くと対面から一人が歩いて来た。どうやら女性のようだ。もしかしたら知り合いかも? 地元だしあり得そう。
スマホを触りながら歩いていた女性がふと顔を上げると俺の方をジッと見つめてくる。
そしてパァッと顔を明るくして俺の方に駆け寄って来た。
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