第46話 説明
「そ、それはどういうことですか……?」
「あー春野さんの冗談と言いますか……」
「それは嘘です。美吹先輩はそんな冗談言いません」
菊池さんの目がマジだ。嘘は一切通用しません。本当のことだけを話して下さいと言わんばかりの眼力。
さっきまでリラックスして勉強ができていたのに、今は予断を許さない状況。こんな形で俺と春野さんの関係が知られることのなるんて。
でもいずれ言わないといけないことだったんだ。こんな形になってしまったけれど、ちゃんと説明しないとダメだろう。
春野さんは俺の大切な彼女だと胸を張って言いたい。
「ここじゃあ他の人もいるから裏の駐輪場に行こうか」
夏の昼間というクソ暑い時間帯だが、クーラーの効いた店内を出て外の駐輪場へやってきた。唯一の救いは日陰だったことだろうか。
「それでどういうことなんですか? 確か川上先輩には地元に四年目くらいになる彼女さんがいるって言ってましたよね。それが美吹先輩ってことですか?」
「そうじゃないの。私たちがお付き合いを始めたのは最近だから」
春野さんの説明に意味が分からないと言わんばかりの表情。頭にクエスチョンマークが浮かんでいるようだ。
もう、言うしかないだろう。この後輩の好感度が下がって、バイトのみんなに言われてもうここにいられなくなるとしても。
ちゃんと説明するのが俺の責任。緊張もするが横には春野さんもいてくれる。
「その……河本さんとかと喋ってる時俺の彼女がとか言ってたけど本当は四年もお付き合いしている人なんていないんだ。最初に彼女いるのか聞かれた時に見栄を張ってしまって。それで……」
俺は出来るだけ丁寧に事情を説明した。菊池さんは静かに聞いてくた。そして一通り話終わったところで菊池さんが口を開く。
「そ、それは仕方ないですね。えぇ。女の子はこう言うことに対する情報共有が早いですから。先輩もいい女の子勉強になったんじゃないですか?」
「お、おっしゃる通りで」
「わ、私……ちょっと家に帰りますね。近いのですぐに帰ってきます」
それだけ言うとクルッと身を翻して駆け出していく。この暑い中家に戻る用事がなんなのか俺には分からなかった。
ただ春野さんは菊池さんの去った方を見て、浮かない顔をしていた。
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と、言うことで次回は菊池さん回となります。大学のテストが近づき、勉強しないといけないため更新頻度が下がるかも知れません。よろしくお願いします。
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