第80話 幼馴染
「あれ? 颯汰じゃん! 久しぶり! 何年振りだっけ。高校別々になっちゃったから全然会えなかったもんね」
イェーイとハイタッチをしてくるこの女の子は幼馴染の莉子。距離感の近い感じの子で男女問わず仲のいい友達が多かった。
ただ高校が違ったから中学校以降はめっきり会わなくなっちゃったけど。この感じを見ると元気にやってるみたいだな。
「ち、ちょっと颯汰くん。この女の子だれ?」
ギュッと俺の手を掴む美吹。俺が女の子と仲良い感じだから不安なのだろうか。心配しなくても俺は美吹一筋なのに。莉子に一才気なんてないのに。
いや。それは違うな。俺だって美吹が他の男と仲良くしているのを見たら複雑な気持ちになってしまう。
「ごめんな美吹、安心してこの子は武末莉子。俺の幼馴染。全く気は無いから安心して」
俺からも美吹の手をギュッと握り返し安心してもらえるようにする。
「およよ。颯汰の横に見慣れない女の子。まさか彼女!?」
「そうだ。俺の大切な彼女だ」
俺がキッパリと莉子に宣言する。すると莉子はニヤッとすると俺の横の美吹の方に駆け寄った。
「あなた颯汰の彼女さんなのね! 名前はなんて言うの? この後時間ある? 颯汰の恥ずかしい過去についていろいろ話してあげる」
「えっとあの……春野美吹です……」
そうなんだよ。こいつスイッチが入るとこうやってグイグイいってしまうタイプなんだ。美吹が引いてるよ。
「美吹ちゃんね! 私のことは莉子って呼んで! それでそれでどうかな。颯汰のことについて知りたくない?」
「あ、えっと莉子ちゃん。それは気になるけど今は颯汰くんとデート中だから」
「そうだぞ莉子。そんな感じだから彼氏ができないんだぞ」
昔散々に彼女が出来ないことを馬鹿にしてきたからそのお返しをする。しかし、莉子も自身ありげに俺を見つめてきた。
「私だって高校に入って彼氏できたもん! もう三年目になるんだから!」
「……」
言葉を失ったよ。まさか莉子に彼氏が出来るなんて。それも三年ってかなりラブラブじゃないか」
「だから安心して、私も颯汰には全く恋愛感情がないからね。小さい頃の颯汰の写真とかたくさんあるよ?」
「行きたい! 颯汰くんの小さい頃の写真みたい! 恥ずかしいからってなかなかみさせてくれないの」
美吹が寝返った! 誰だって小さい頃の自分を見られたくないだろ?
「と、いうことで颯汰ごめんね〜1時間くらい美吹ちゃんもらって行くよ。颯汰も1時間くらいしたら家に迎えに来てあげてね」
「颯汰くんごめんね。この埋め合わせは絶対に後でするから」
「はぁ……仕方ないな。美吹いってらっしゃい」
俺は送り出すことにした。本当だったら俺だってずっと一緒にいたい。でも、莉子と美吹が仲良くなってくれたらそれはそれで嬉しいから。
美吹たちを見送った俺はとりあえず近くのコンビニへ入った。
そこで買ったのはパピコ。美吹が戻ってきたら二人で分け合って食べよう。二人で食べるところを想像しながらレジへと向かった。
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