第12話 嫉妬side美吹

 ゴシゴシゴシ


 ゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!


 ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!


 希空ちゃんと川上くんがすごく仲良くおしゃべりしてる。私のいるパントリーからそう遠くないところにあるカウンター席。そこに並んでご飯を食べている二人。


 今はお客さんのいないノーゲスト状態だし、別にお喋りしててもいいけど……


「ちょっと仲良すぎないかな?」


 さっきなんて唐揚げと野菜炒め交換してた。そんなこと普通しないよね?


 おかず交換なんてそんなのもう恋人じゃない。


 そう思うと何故か洗っているガラスコップをさらに強くゴシゴシとしてしまう。さらに胸の辺りがモヤモヤする。


 今まで感じたことのないこのモヤモヤ。これが「嫉妬」というやつなのだろうか。


 仕事をちゃんとしないといけないのに、二人の様子を伺ってしまう。


「これが恋愛の辛さなのね」


 ついこの前なんて最初で最後の私の恋とか言っていたけれど、本当に私はちゃんと諦められるのだろうか。


 今、希空ちゃんとこうして仲良くしているのを見ているだけでここまで思ってしまう。


「私、川上くんにゾッコンじゃない」


 二人に聞こえないように漏らした声。


 そんな時に来客が。私は慌ててお客さんを出迎える。二人組のお客さんで……


「あれ? 美吹ちゃんじゃん!」


「優希ちゃんと、桃華ちゃん?」


 お客さんはまさかの私の大学の友達だった。二人とはとても仲良くて、沢山お喋りしている。


「二人は買い物帰りとかかな?」


 見るからに沢山の荷物を持っての来店だ。たぶん近くのショッピングモールで服とか化粧品とか買ったんだと思う。


「そうそう。本当は美吹ちゃんも誘おうと思ってたんだけどバイトで忙しそうだったから」


「でも、ここで働いてたんだね。美吹ちゃんどこで働いてるか教えてくれないからさ」


「あはは……」


 私の反応に、優希ちゃんは分かってるよと言わんばかりの表情。


「だって美吹ちゃんがここで働いてるってバレちゃったら大学の男たちが集まってきちゃうもんね。私たちも内緒にしておくよ」


「あれ? あっちのカウンター席にいるのって…川上くんって人だっけ?」


 桃華ちゃんがの目線の先には川上くんがいて、やっぱり希空ちゃんと仲良くお喋りしている。


「桃華ちゃんよく知ってるね。そうだよ。たまたま川上くんも同じ職場なの」


「それにしても川上くん彼女いたんだ」


「彼女じゃないよ!」


 思いっきり突っ込んでしまった。今二人以外にお客さんがいないからよかったものの、二人ともびっくりしてる。


 でもそうだよ。希空ちゃんは川上くんの彼女じゃないもん。違うことはちゃんと訂正しておかないと。それだけなんだから。ちょっと桃華ちゃんの発言にモヤモヤが爆発したとかじゃないもん。


「あっ、ごめん。私はまだ仕事あるから。ではごゆっくりどうぞ」


 半分逃げるようにして私は二人を後にした。


 休憩まであと三十分。私はずっとモヤモヤしたままだった。

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